■ Back Number  ■ 2006年 3月 No.169
 
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【会社法施工直前】
 会社法の施行日は、現時点(06年3月20日現在)では、告示されていませんが、5月初旬の方向性でほぼ固まっているようです。  会社法の施行が迫ってきまして、それぞれの会社において、施行時点で自分の会社がどうなるか、どのような扱いになるかというテーマについて、にわかに関心が高まっているようです。

今までの商法上の「株式会社」はどうなるのか
 とりあえず、そのまま存在します。しかし、施行の日において、整備法により商法の会社編の規定はすべて廃止されますから、新・会社法による株式会社として法的根拠を得ることになります(整備法66条)。
 そのため、旧商法(施行の日と同時に旧商法となる)による株式会社には、定款や登記についてさまざまなみなし規定が、整備法によりおかれます。
 そのみなし規定とは
@ 商法特例法上の大会社、みなし大会社、小会社および委員会等設置会社については定款に規定があるものとみなす
A 取締役会および監査役を置く旨の定款規定があるものとみなす
B 株式譲渡制限のある会社は、その発行する全部の株式の内容として譲渡による当該株式の取得について、株式会社の承認を要する旨の定めが定款に規定しているとみなす
C 定款に株券を発行しない旨の定めがない場合にあってはその株式に係る株券を発行する旨の定めが定款にあるものとみなす
D 募集株式の募集事項を取締役会の決議によって定めることができる旨の定めの内容の会社法第202条3項2号に規定する定めが定款に規定されたているとみなす
E 取締役会設置会社、監査役設置会社、株券発行会社である旨の登記がされたとみなす
 以上のみなし規定があるので、特別に定款の変更や変更登記申請はとりあえずはありません。
 なお、種類株式発行会社である場合には、その内容、種類ごとの数を登記しなければなりません(整備法113条5項)。
 商法特例法上の大会社またはみなし大会社である定款には、監査役会および会計監査人を置く旨の定めが定款にあるとみなす(整備法52条)規定がありますが、監査役会設置会社である旨および監査役のうち社外監査役であるものについては社外監査役である旨、会計監査人設置会社である旨および会計監査人の氏名または名称をそれぞれ新・会社法施行の日から6ヶ月以内に登記しなければなりません(整備法61条3項)。
 小会社は、監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定め(会社法389条1項)が定款にあるものとみなされます(整備法53条)。定款を変更ならびに登記の必要はありません。
 委員会等設置会社は、定款に取締役会、委員会、会計監査人を置く旨、会社法459条1項2号から4号までに掲げる事項を取締役会が定めることができる旨ならびに当該事項を株主総会の決議によって定めない旨の定めがあるものとみなす(整備法57条)ので、このための定款変更は不要。ただし、会計監査人設置会社である旨および会計監査人の氏名または名称を新・会社法施行の日から6ヶ月以内に登記しなければなりません。

有限会社はどうなるか
 有限会社は、会社法施行の時点で、会社法による有限会社型の特殊な株式会社の類型の一部とし「特例有限会社」という株式会社として存在します。現行の有限会社法は廃止となります。ですから、特例有限会社は、会社法および整備法の規定により規律されるのであり、旧有限会社法によって規律されることはなくなります。有限会社法が廃止されるので、会社法施行時点で設立の登記がされていない有限会社は成立しません。この点については何らの経過措置も講じられていませんから注意が必要です。
 現行の有限会社は、基本的に今の有限会社法で定められたシステムとほとんど変わりなく、会社法の元でも手続きを進めることができるように整備法で手当てされています。もちろん、会社法の株式会社として無理やり存在しているようなものですから、定款みなし規定もたくさんあります。なお、特例有限会社は、会社法の株式会社の一種ですから、会社法施行後においては、社債や新株予約権の発行をすることができます。

会社法施行に伴う注意点
 さまざまな経過措置は、施されていますが、例えばグリーンシート企業のように資本金1億円未満の小会社で、譲渡制限規定をはずしている公開会社の場合は、会社法施行時点で監査役の任期が満了してしまいます。これは、会計監査権限のみの監査役が、会社法の規定によりこのような会社には業務監査権限を持つ監査役を選任しなければならなくなるからであり、会社法の規定によりそのような内容の会社になったときに会計監査権限のみの監査役の任期が満了することになっているからです。従って、そのような会社は、新しい監査役を早く選任する必要がありますが、その間までは、任期満了となる監査役が権利承継監査役となり、業務監査も含めて行なう義務があるため、事実上は支障はでません。
 また、会社法施行以前に決算期が到来する場合は、なお「従前の例」によることになっていますから、今までどおりの計算書類の作成で問題ありません。しかし、5月以降に決算期のくる会社は、会社法による計算書類を作成しなければなりません。

今年やるべきこと
 会社法施行によって瞬時に何かが変わることはありませんが、みなし定款規定がいっぱいある状態は好ましくなく、特に機関設計に関する事項や定足数の規定など早期に定款を整備しておいた方が好ましいです。また、株式や新株予約権の発行権限などもきちんと定款に盛り込んでおくべきでしょう。
 さらに、中小企業の場合、対金融機関対策として会計参与導入を検討する必要も出てきます。今後、資金調達面において、信用度を増す会社が現れてくると相対的に現行のままの会社が不利になる事態も予想されます。総合的な検討が早期に必要でしょう。
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