■ Back Number  ■ 2005年 10月 No.168
 
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【LLP法創設(3)】
〜LLPを創る〜

 では、実際に有限責任事業組合(LLP)の創設の手順をみてみましょう。
 これまでも説明しましたが、LLP法の特徴としては、@ 出資者全員の有限責任、A 柔軟な意思決定や損益配分、B 構成員課税の三点です。これに関連して、前回でも説明しましたが、債権者保護について法律の構成としてかなりの部分を裂いています。これは、組合員の有限責任性を強めると組合債権者にとっては組合財産が債務超過になっても個人への追求はできず、民法組合にとって不利益を受けることが大きいからです。よって債権者保護規定をいくつか設けていますが、これは、つまり、形式的要件を整えて組合を作る、つまり単に契約書を作成し、登記すればいいというわけではないことを示します。単純に形式的なことだけを調べて安易に組合を作ると大やけどをしますから、十分な注意が必要です。
 また、組合員の責任に関して、LLP法15条に「出資の価額」の記載がありますが、この「出資の価額」とは、実際に払い込まれた出資の金額を指すのではなく、LLPの事業活動に伴う組合財産の増減を加味した出資持分金額を指すとしています。そのため、現物出資などの場合には、会計上の増減が生じますから、ここの取扱をどうするかが問題となります。また、組合の債務には、取引に基づき負担する買掛金債務、組合財産である建物から生じた工作物責任など事業活動によって生ずる債務が広く含まれることにも注意が必要である。
 要は、そういう管理体制・財務会計の管理・開示体制の整備などオペレーションの部分も十分検討され、かつ組織として動ける体制をも考慮されていないと、付け焼刃的にこれを活用すると危険ということである。

組合契約
 民法組合は、その成立のための組合契約について出資をして共同の事業を営むことを訳するだけで、成立し、書面によることも要していない。また、民法の規定に特に合意すべき事項の詳細も決めていない。
 これに対してLLP法は、その有限責任性、債権者保護の観点から、定めるべき要件を列挙し、かつ書面による契約書を作り記名捺印することを求めている。この書面による組合契約書がないと有効に成立したことを認めず、LLP設立の要件は要式契約と構成されている。
 組合契約書には、絶対的記載事項が定められている。それは次のとおりです。
1 組合の事業
 組合員全員が共同で営利事業を目的として事業を営むことから、どのような事業を行なうのかを明確にするためである。これは有限責任の事業の範囲に関係することだけでなく、後に構成員課税されるときにも大きな影響がある。当然、目的の範囲外の事業があれば、事業所得として認められるかが問題となる。
 また、有限責任として事業を営むことがふさわしくない業務ならびに組合債権者に不当な損害を与える業務については、政令で定め営むことができないこととする。当然、このような事業が記載されていると登記もできない。対象としては、弁護士、行政書士、司法書士、税理士、公認会計士等の本来の業務が法律で無限責任性を求められているものなどである。これらについては、それそれの資格を定めた法律で法人化が認められている方法で対処されることとされている。従って、士業を跨いだLLPの創設は現時点ではできないが、経済産業省サイドでは将来的には手当てすることを検討している模様である。
2 組合の名称
 第三者に対してLLPであることを明確化するためである。他の組合との混同を避けるため名称中に「有限責任事業組合」の文字を使用しなければならない。
3 組合事務所の所在地
 事業を行なう拠点として事務所を定めるものである。
4 組合員の氏名または名称及び住所
 構成員全員の個人・法人のすべてを明らかにすることである。LLPは法人格がないので、各組合員が組合財産の所有主体や取引の主体となることからも組合員の住所を明らかにすることとされる。法律で、組合員全員が自ら業務執行に関わることを義務付けているので、組合員は個人または法人に限定され組合や権利能力なき社団が組合員になることはできない。法人の場合は、現実にその職務を行なうべき者を選任しなければならない。また、組合員の国籍は問わないが、居住者または内国法人が1以上必ず組合員になっていなければならない。
5 組合契約効力発生年月日
 LLP法で組合契約効力発生日より2週間以内に登記しなければならないと定めていることから効力発生日を確定させる必要があるためである。だた、出資履行が効力発生要件となっているので、契約上の効力発生日より履行が遅れた場合は、履行完了の日が効力発生日となる。
6 組合員の出資の目的及びその価格
 説明するまでも、文言のとおりである。なお、組合財産を適切に確保するため労働出資は許されていない。組合員の人的貢献は、損益分配で評価されることなる。
7 組合の事業年度
 1年を超えてはならない。
 以上が絶対的記載事項。業務執行の決定要件、組合員の除名要件などは相対的記載事項とし、これらは契約書に記載されないと効力が発生しない。その他、当事者間で任意に合意した事項を任意的記載事項として記載できる。
 出資の履行の確保が効力発生要件となっているので、株式会社の払込同様の証明が必要とされる。
 ところで、一番関心のある損益の分配及びその割合については、組合員間の合意により行なうこととされ。特に事前契約書等には記載されない。人的貢献を分配割合に反映させるには、結果を元に検討されるべきだからでもある。民法でも元々そういう扱いは認められている。ただ、LLPでは組合員全員の合意が必要とされる。
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