■ Back Number  ■ 2005年 10月 No.164
 
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【LLP法創設(2)】
〜有限責任事業組合の話(2)・財務面の管理が鍵か?〜

 有限責任事業組合については、前回のレポートのころより、詳しく内容を教えてほしいとの問い合わせが多数寄せられており、その関心の高さがわかります。
 おおまかな仕組みについては、前回のレポート158号を参照していただければと思いますが、いつくか補足する事項と現実に着手する場合の検討事項があります。

 まず、そもそもの話のようですが、有限責任事業組合法は、既に施行されています。したがって、見よう見まねでもすぐに作ることは可能です。前回のレポートでも説明のとおり、これは複数の事業者がいわば徒党を組んで一つのプロジェクトに当たるための組合ですが、それをあらかじめの契約によって利益配分方法を投資割合(シェア)と違う割合で分配が可能とすることができるものです。
 そして、その組成には登記が成立要件となっています。

 この組合の組成については、ファンドのように単にお金などを出資するだけで事業に参加せず、その運用をファンドマネージャー(無限責任組合員)に任せるというような形態を認めていません。あくまで全員野球のような形態を求めています。本来は、所属する団体や会社との関係で参加が難しいものを組成させることや会社と個人の関係でも対等に構成員として加えさせることなどを利点として、ともかくも共同プロジェクト参画型団体のイメージで作られています。
 さて、そうは言ってもともかくも組合ですので、何らかの出資があって初めて構成員となります。その出資は、金銭はもちろんですが、不動産や動産・有価証券といった現物の出資も可能です。ただし、労務などサービスのみの出資は許されていません。
 ここで問題となるのは、現物の価値と出資持分の関係です。
 LLPの制度は、今般新設された制度ですから、実は財務・会計について細かい部分の検証はされていません。特に税務関連で疑義も多いのが実情です。類似の通常の民法組合ファンドや有限責任投資事業組合などの例を参考にするしかありませんが、なお、詳細の部分であてはまらない部分もあります。
 LLPでは、債権者に対して開示を徹底することで有限責任の制度を維持することを強調しています。そのため、財務諸表など会計帳簿の作成をいたします。ところで、建物や動産などは、減価償却の対象になりますから、年数が経ちますとその価格は減少します。逆に有価証券の場合、時価があがりますと当然価値も上がります。このような場合、出資のシェアに影響を与えるべきか、それとも減価償却は共同のコスト、時価上昇による評価益は共同の利益にしてよいのか、その場合の扱いについてはLLP法では記載がありませんので、会計方針について検証が必要になりますし、組合員間のトラブルのもとにもなります。
 本法による組合を組成させる場合、まず出資をしてもらった資金等や今後の売上・利益、コストの支払等は、どこでやるのかも重要な問題となります。具体的には、銀行口座を開設して管理することになりますが、組合員の中で代表して管理する事務局的な立場を創設する必要があります。また、同時に帳簿の作成や開示手続きをする必要がありますから、現実的には税理士や会計士の関与を検討して財務内容開示の透明性を検討しなければなりません。
 現在は、一部の専門書などでLLPの作り方的な解説本も出ていますが、中身はこうすると登記が完了するというもので、財務的な問題を示しているものはありません。おそらく会計の本も出るでしょうが、そもそも根本的な問題を示してくれる本も少ないのではないでしょうか。
 税務的なリスクの面で、一番大きな問題はLLPという組合を否認されことです。たとえば、全組合員が全員事業に参加していることが条件ですから、単なる投資家的に何の事業も分担していないことが税務調査等で発覚した場合、LLPの要件を全うしていないという理由で否認され、普通の民法組合とみなされる可能性があります。このような場合、LLPは、組合自体に課税せず、構成員たる組合員に直接分配をして組合員が個別に課税する、つまり事業所得として計上できるわけですが、これを否認されると雑所得になります。雑所得となると、税率が高いですから、実質的な税額が大きくなりデメリットが過大となります。
 そういう面からすると、あまりいい加減な知識で安易に設立すると火傷をするということになります。LLP組成のポイントは、きちんと要件どおりの組成をするだけでなく、形式的にならず実質的にも条件をかなえること、それと財務関係をきちんとしていくことが重要といえます。
(以下、LLPの特集(3)へつなげます)
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