■ Back Number  ■ 2005年 8月 No.162
 
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【株式会社はどうなるか?】
〜新・会社法の内容B〜

 新会社法が7月26日に公布されました。いよいよ、施行に向かって着々と進むことになります。
 一番関心の強いのは、新会社法になって株式会社はどう変わるのかという点ですが、それ以上に新・会社法施行の時点でウチの会社はどうなるのか、何をしなくちゃいけないのかが一番気になるところでしょう。今回は、そのお話をいたします。

基本的に何もしなくてもよい
  とりあえず、今の株式会社は、新・会社法における株式会社として、そのまま存在できます。その結果、旧商法(現行商法)で設立された株式会社が、そのまま新・会社法においても存在できるという法的安定性を維持できることになります。
しかし、施行の日において、整備法により商法の会社編の規定はすべて廃止されますから、今の株式会社は、新・会社法による株式会社として法的根拠を得ることになります(整備法66条)。
 そのため、旧商法(施行の日と同時に旧商法となる)による株式会社には、定款や登記についてさまざまなみなし規定が、整備法によりおかれます。
 そのみなし規定とは
@ 商法特例法上の大会社、みなし大会社、小会社および委員会等設置会社については定款に規定があるものとみなす
A 取締役会および監査役を置く旨の定款規定があるものとみなす
B 株式譲渡制限のある会社は、その発行する全部の株式の内容として譲渡による当該株式の取得について、株式会社の承認を要する旨の定めが定款に規定しているとみなす
C 定款に株券を発行しない旨の定めがない場合にあってはその株式に係る株券を発行する旨の定めが定款にあるものとみなす
D 募集株式の募集事項を取締役会の決議によって定めることができる旨の定めの内容の会社法第202条3項2号に規定する定めが定款に規定されたているとみなす
E 取締役会設置会社、監査役設置会社、株券発行会社である旨の登記がされたとみなす
 以上のみなし規定があるので、特別に定款の変更や変更登記申請はとりあえずはありません。

また、小会社は、監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定め(会社法389条1項)が定款にあるものとみなされます(整備法53条)。定款を変更ならびに登記の必要はありません。

新・会社法施行後に旧商法の株式会社が存在するということは?
 しかし、これは新・会社法への移行により本来定款の変更手続きや登記手続きを行われるべきところ、既存のすべての株式会社がそのような事態が生じて国民負担があまりにも大きいことから、みなし規定を設けたのであって何も変わらないわれではありません。とりあえず、新・会社法においても旧商法で規定された株式会社の仕組みをとりあえずそのまま維持できるように手配されたということです。
株式譲渡制限のある会社の場合における株券の扱いについては注意が必要です。平成16年10月施行商法改正において株券不発行制度が導入されましたが、このときは株式譲渡制限のある会社においては、定款に株券不発行の定めがなくとも株券の発行を要しない扱いとし(ただし、現に株券の発行がない場合)準株券廃止会社として扱いましたが、今般の整備法では株券の発行の定めがあるものとみなされます。つまり、施行前は、株券の発行がないものとして扱い、株式の譲渡や質入を行う時には株主の請求により株券の発行が必要であるとしていたものを、施行後は株券発行の会社として扱うということになったわけです。ただし、株式譲渡制限の会社であれば、定款に株券発行条項があっても株券の発行請求を受けるまで株券を発行しないことができ、実質的に旧商法の準株券廃止会社と同じ扱いとして処理されています(会社法215条1項、4項)。
施行の時点で就任している取締役、監査役の任期は、旧商法の時に選任された時点での任期がそのまま適用されます(整備法95条)。例えば、平成17年6月の定時株主総会で選任された取締役の任期は2年ですので、平成19年6月が任期となります(定款に任期の伸長規定があるときは、定時株主総会の終結の時までとなっているのが普通です)。仮に平成18年6月の定時株主総会の前に会社法が施行され、定時株主総会において取締役の任期を1年間に短縮する、または5年間に延長すると定款の変更を決議を定めたとしても、平成17年6月に選任された取締役の任期は2年間のままであり、その任期満了により後任者を選出する者が新しい任期が適用されます。
名義書換代理人については、会社法では株主名簿管理人という名前に替わりますが、旧商法の時代に設置された名義書換代理人は会社法施行の時には株主名簿管理人又は社債原簿管理人を置く定めがあるとみなすことになっています。
 整備法においては、施行の前までに旧商法の規定により行われた株式会社に関するすべての手続きは、なお「従前の例」により原則適用され有効なものとされます。これは、法律の変更により従来有効とされたものが、突然根拠を失い無効となるような法的安定性を欠ける事態を避けるためです。
 ただ、みなし規定のないものは、新・会社法の規定が適用されることに注意してください。
 例えば、株主総会や取締役会の招集の方法や新株・新株予約権・社債の発行手続きなどは、すべて新・会社法に記載されている手続きによります。
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