■ Back Number  ■ 2005年 7月 No.160
 
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【有限会社・確認会社はどうなるか】
〜新会社法の内容B〜

意外と問い合わせが多く、また疑問点が問題となっているらしく、各論の前に有限会社がどうなるかという話と最低資本金特例の確認会社の扱いについて、ポイントだけ先に説明します。

有限会社の扱い
 今回の新・会社法施行に合わせて、新会社法に関する整備法(「会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律」)も施行されて、有限会社法は廃止されます。
 では既存の有限会社はどうするか。既に、一部の法律雑誌の特集や解説書に記載のとおり現存の有限会社は残ります。ただ、法的には、その根拠をどうするかの問題があります。借地借家法のように昔の借家法で締結された契約は継続する限り旧借家法で、借地借家法成立後に新たに締結された契約は新法によるとされると、いつまでたっても旧借地法、旧借家法も知らないと実務ができなくなってしまいます。事実、借地借家関係は未だに旧法の記載が六法全書に載っています。旧法の記載がないと実務に困るからです。
 今回の会社法改正の趣旨は、広範多岐にわたる法典のスリム化、わかりやすい法典を作るとともに、あまねく会社制度の一本化をめざすという所にあります。つまり、法典は一つで、そこから場合わけで様々な機関設計の会社組織が構築されるという構成をとることにあります。
 そこで、借地借家法のように、一定以前に成立の会社はなお有限会社法によるという構成をせずに、他の一般の株式会社同様すべて新会社法施行と同時に新会社法による存在を認められた会社に移行し、有限会社法は廃止する構成となりました。その代わり、実態的にも新会社法施行の瞬間にも今の形・内容の有限会社は存在するわけですので、整備法において新会社法における特例会社という扱いにして、あくまで新会社法の定める株式会社の特例という位置づけで構成することになりました。つまり、株式会社と別個独立の法人制度ではなく、あくまで新会社法で定める株式会社制度の変形という位置づけです。
 で、結論からいうと、理屈はともかく、このまま何もいじらなければ、今まで通りの運営と解釈して構いません。

経過措置による旧有限会社の存続
 まず、存続できる有限会社は、新会社法施行日の前日までに存在していなくてはいけません。有限会社の設立、もしくは株式会社から有限会社への組織変更は、施行日前日までに手続きが有効に成立していれば効力があります。(例えば前日までに出資金の払込まで完了していして施行の日以降に登記する場合など)。有限会社の定款は読み替え規定が置かれて、社員、持分、出資一口は、株式会社の定款、株主、株式、1株と読みかえられます。株式会社としての授権枠は、有限会社の資本の総額を出資一口の金額で割った数とします(例えば資本金300万円で1口金額5万円の有限会社は、60株の授権枠)。株式会社の変形ですが、商号は「有限会社」の文字を使用しなければいけません(この法律では特例有限会社といいます)。  有限会社の社員名簿(出資者の名簿)は株主名簿とみなします。有限会社は株式の譲渡制限の定めが定款に定められているとみなします。その代わりに有限会社のままでは種類株式の発行はできません。社員総会は株主総会となります。ただし、有限会社法に沿った運営・採決等の諸条件の変更みなし規定があります。  取締役の任期について、新会社法は最長10年以内としてありますが、特例有限会社は適用除外として任期の定めなしとます。  計算書類は公告をすることが新会社法では義務付けられていますが、特例有限会社は旧有限会社法同様適用除外となり、決算公告の必要はありません。  その他は、別途解説しますが、では有限会社のままで不都合があるのかどうか。それは、新会社法では、株式会社は自由な機関設計、様々な種類株式の発行など資本政策的にダイナミックなことができますが、有限会社のままではできません。また、合資会社、合同会社など持分会社でも社債を発行できるようになりましたが、それもできません。つまり、今までの有限会社のままで、新会社法で新しくお目見えした手法は使えないということになります。つまりは、じっとインナーの会社として進むか、アクティヴな会社へ進むかの方針によって取組み方が変わるということです。

確認会社の扱い
 最低資本金特例の確認会社の扱いはどうなるのかという質問が寄せられています。もちろん、新会社法でそのまま生き残るのですが、問題となるのは確認会社の定款に定められている設立5年後に最低資本金以上の資本金に積み上がらなかった場合、解散するか合名・合資会社になるという規定がどうなるかという点にあります。例えば、融資の申込で期間5年の借入れをする際に、設立5年後が先にきますから、期限の前に最低資本金の条件に抵触して解散になるのではないか、それが与信に影響するという話です。
 整備法では、今の最低資本金特例の根拠法である中小企業新事業促進法の当該規定は当然に削除されません。その代わりに、当該法律の定めにかかわらず、新会社法施行後、新会社法の規定にかかわらず取締役会で、当該定款規定の変更に限り決議することができる規定が定められています。つまり、新会社法により当然に削除はされませんが、施行後に確認会社は取締役会を解散して当該規定の定款変更を決議して登記をすることにより削除できます。逆に言うと、これを忘れて放って置くと設立5年後にこの定款規定が発動されてしまうことになります。新会社法は定款字自治を促進していますから、規定の効力は生きるわけです。
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