■ Back Number  ■ 2005年 7月 No.159
 
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【新会社法の目玉】
〜新会社法の内容A〜

 新会社法について、先般立法担当者からの説明会があり、その意図やポイントが明確になりました。

方針・施行など
 6月29日に参議院において可決し、新会社法は成立しましたが、まだ公布がされていません。夏の間に公布するとのことです。施行は、公布の日から1年半以内に設定することになっており、理論的には来年の暮れまでですが、現在の法務省サイドの考えでは、来年の3月期決算の定時株主総会が集中する6月の前または前々の月に施行としたいという方針ですので、おおむね来年4月ないし5月の施行と睨んでおいていいでしょう。
 今回の新会社法の全体の精神としては、@法律の整備として、より簡潔化をめざし、多岐にわたる複数の法律による構成をやめ、なるべく準用規定も避けること、A大会社に認められて小会社に認められない委員会設置会社、小会社に認められ大会社では採用できない有限会社の制度など、規模や状況による制度の不均衡を避けて統一した法制度とすること、B会社制度の簡潔化させるが故に、情報開示の充実、大企業においては内部統制体制の徹底化をさせること、があげられます。

会社の概念の整理
 現在は、株式会社、有限会社、合資会社、合名会社という種類に分けられています。これを新会社法では株式会社と持分会社という大きな区分けで区分して、その持分会社の中で種類として、合資会社、合名会社、合同会社に分けています。この株式会社と持分会社の二つの区分にまとめたのが今回の特徴です。
 すなわち、投資家等のとう すなわち、出資者の出資を受けて機関を設計して運営する物的会社と、ノウハウや知的財産等の結びつきの強い人(法人も含む)の結びつきに重点を置いた人的会社に二分しています。
 株式会社はその大小にかかわらずガバナンスと情報開示を徹底するようになりました。一つは、中小企業に対する無担保ビジネスメーンの普及により金融界から財務内容の開示の徹底が求められたこと。大会社の不祥事のたびにそのガバナンスとコンプライアンスが求められてきましたが、その徹底化とともに、何も上場の有無で判断の基準をするのでなく、譲渡制限の有無で責任の所在を区分けする方が合理的ではないかとの判断も徹底化されています。よってインナーの小会社はどんどん金融的に厳しい環境になると考えれます。
 会社法は、会社法だけで一つの法典になるように構成されています。今度の新会社法の制定に伴い、商法の会社法の規定がそっくり削除されて移転します。今まで、共通の規定であった商法総則の部分は、もちろん商法にそのまま残りますが、新会社法においては、会社に適用する商法総則の規定を通則として冒頭に設置し、あえて商法の準用をしないように構成してあります。よって商法における「商人」の規定に従来会社も含まれていましたが、商法においては会社は含まないこととし、商法総則の規定は個人の事業者の規定に限定されることになりました(商行為の規定は従来どおり個人・法人どちらも共通の規定のままです。商法総則で定める登記・商号・商業使用人・営業・商業帳簿の規定などを重複させない措置です)。
 新会社法の構成は、従来の商法の会社法の規定の構成と変わり、全体として流せるようにしてあります。今までは、株式会社、合資会社、合名会社ごとに設立や組織、資本の増加の規定を定め、しかも一部は、最初に規定している合名会社の規定の準用で構成するなど複雑でした。今回は、次のような章建てになっています。
第一編が「総則」。まず、通則があり、会社の商号、会社の使用人等、事業を譲渡した場合の競業の禁止等の規定の章となります。第二編が株式会社。設立、株式、新株予約権、機関、計算等、定款の変更、事業の譲渡等、解散、清算と構成されています。第三編が持分会社。設立、社員、管理、社員の加入及び退社、計算等、定款の変更、解散、清算となっています。このあとは、株式会社・持分会社共通の規定として章を構成している。第四編として社債、第五編 組織変更・合併・会社分割・株式交換及び株式移転、第六編 外国会社、第七編 雑則、第八編 罰則となっています。
 この章建てからもわかるように、持分会社でも社債の発行が可能となったこと、持分会社・株式会社を縦断した事業再編が可能なことが、今回の改正の特徴といえます。
 その意味で、持分会社の使い方という面において重要な意味を持つということになります。
 なお、参議院の審議において外国会社の扱いについて問題となり、新聞にも報道されました。擬似外国会社の規定の問題です。結局、この部分の修正はされませんでした。この規定の立法趣旨は、こういうことです。
 日本で普通に会社を設立して登記すべき内容のものを外国の会社で設立して日本で活動するのはやめてくださいということです。具体的には、日本で会社を作ると最低資本金やら登録免許税やら定款の認証やらでコストがかなりかかる。物の本によるとハワイで米国法人が全部のコストで30万円くらいで、しんも全部お任せでできる。安いし、米国の会社だからステータスもあるし、ハワイの会社にして、日本で事業をやろうというようなケース。これは、ひところ、そういうノウハウ本もありましたが、商法のころからの禁止規定で、日本の会社として設立すべきものは日本の会社として設立せよという規定を明確化したものです。

株式会社の規定の中の目玉か?
 今回の新会社法の規定の中で、注目すべき制度は多々ありまして、とてもこの紙面だけでは書けませんが、今回は一つだけご披露しましょう。全部取得条項付種類株式の取得の規定と取得請求権付株式の取得の規定です。 全部取得条項付種類株式とは、最初から新株としてそのうよ内容の種類株式を発行するか、株主総会の特別決議で定款を変更して既存の発行株式の種類を転換することにより発行できるもので、100%減資して、新たにまったく別の株主にさせてしまうことができる株式です。具体的には、当該株式を全部取得してしまうわけですが、その対価として現金でも社債でも別の会社の株式でも自由に設計することができます。取得条項付株式は、株主総会で株主全員の同意により定款を変更して転換できるものですが、ある一定の条件が成就すると会社が当該株式を取得することができる種類株式です。これらの規定は、米国会社法にはありまずか本邦では初御目見えです。ダイナミックが資本政策ができるまずか、一気にひっくり返されるわけで、オセロゲームのように諸刃の剣ではあります(以下次号)
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