■ Back Number  ■ 2005年 7月 No.158
 
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【LLP法創設(1)】
〜有限責任事業組合契約法の解説(1)〜

 現在開催中の通常国会において、4月27日に「有限責任事業組合契約に関する法律」が可決・成立し、5月6日に公布、この夏以降に施行の予定となった。こちらの制度は、組合なので、Limited Liability Partnership = LLP と呼ばれる(来年春に施行予定の新会社法で制定される「合同会社」は、Limited Liability Company = LLC と呼ばれる)。
 このLLPは、どういうものなのかというと、例えばあるプロジェクトがあるとする。ベンチャーや個人営業の専門家事務所、行政書士や弁護士の事務所など個別化された専門家がチームとなって集まって、一つの事業を立ち上げ、目的を達成するとまたバラバラになって、また違う案件の時に違うグループを組成して事にのぞむ。今ままでもよくある業務形態ですが、いわゆるジョイントベンチャー式で任意なものでした。これをもうこれをもう少し法的に組成しようとすると民法で規定する組合を利用するケースがありますが、これですと、組合員はその事業について無限責任、つまりその団体で負った債務(借入だけでなく、買掛などあらゆる債務が入る)をすべての組合員が責任を負わねばなりません。また、利益の配分方法もその組合の出資割合に比例せざるを得ません。
 無限責任ですと、その仕事のウィークポイントを担う担わないにかかわらず皆責任をかぶることになりますから、加入しくいということになります。また、仕事への貢献は、何もその事業に金を出したということだけでなく、その担当のノウハウや所有するインフラの利用貢献にもよることが多いのであり、むしろ出資しないで委託を受けて業務を分担する方が多いのですから、出資割合による分配はなじみません。
 そこで、欧米などで採用されているLLPの制度導入が叫ばれました。
 この制度には、構成員は有限責任であること、組合契約において利益配分の方法を自由に定められる、組合ではなく構成員課税となとなる、という三つの特徴があります。
 新会社法で制定される合同会社は、同じく社員(出資者)は有限責任ですが、あくまで法人であることから会社に課税されます。このため、社員に分配されるときは、さらに個人として課税がかかることになります。

LLPを利用した事業の想定例
 LLPを利用した事業の例として、いくつか紹介しましょう。
@ 例えば何かのソフトウエア開発をする場合。プログラマーAがプログラミングを、デザイナーBがグラフィックデザインを、セキュリティー開発会社Cがセキュリティーを、ソフト開発と販売を得意とする会社Dが営業を行うため、共同してチームを作り開発と販売をする。

<法人>を利用すると、出資比率で議決権や配当が決まり専門家の人的貢献に報えない。赤字の場合に組合員所得と通算できない。
A コンテンツ 映画制作の場合
広告代理店A社(企画・広報)、映画会社B社(興行)、アニメプロダクションC社(映画制作)、出版社D社(広報・書籍化)、テレビ会社E社(広報・TV放映)をそれぞれ担当するべく映画制作委員会としてのLLPを作る(現状は民法組合を利用している)
<民法組合>のままだと、出資者が無限責任のため新しいパートナーが得られず、限られたメンバーのプロジェクトとなってしまう。出資者が無限責任のため、新進の監督や脚本家が自らプロジェクトの立上げをすることができない。その結果、業界の系列化、沈滞化を招く。
B 金型メーカーと成形加工メーカーの連携例。
 高い技術力と目利き能力を持つ金型メーカーA社、三次元CADを使い高度な設計のできる金型メーカーB社、エンジニアリングプラスチックの材料技術に詳しい加工メーカーC社、多様な材料の成形加工技術を有するD社が、共同で高性能自動車部品の開発・製造をするためにLLPを組成する。
 この場合、A社がコア企業として全体をリード、目利き能力を生かして大企業に対する提案型事業展開を推進。各社が金型製作・成形加工に関して専門的な能力を提供することによって事業目的を実現する。
<LLP>を利用することにより、開発への技術貢献大きい企業に出資比率以上の多くの議決権と利益分配を与えることができる。構成員課税となることにより、開発投資による損失を会社の所得と通算できる。利益がでれば、LLPに課税されず、会社への利益分配に直接課税される。
 そのほか、例えば共同開発でチームを作る、会社とそのスタッフである社員や研究員の個人がそれぞれ構成員となってLLPを作って研究開発する(研究者にも利益分配される)(特許の開発とか創薬などが想定)とか、企業同志が集まって次世代型などまだリスクが確定してないプロジェクトを共同開発するなどが想定される。

LLP制度の概要
 LLPの制度は、もっと詳しく説明しようと思います(上記の例示でかなりインスピレーションを触発された方も多いと思いますので)。今回は紙面の都合で概要の概要を簡単に示します。
 一応、金銭とか現物出資による出資があって組合を組成するという形式をとります。最低の額とかの定めはありません。労務提供による出資はありませんが、組成する時の契約で議決権の割合や利益分配を調整することが可能です。組合員は有限責任です。つまり、出した分が、チャラになると覚悟するだけでよいという仕組みです。そのため、組合の債権者が割りを食いますから、債権者保護規定があります。まず、有限責任事業組合契約を締結することが義務です。それに基づき組合の登記をしてディスクロします。財務データは開示されなければなりません。
 契約のときに、出資者間の損益や権限の配分を、出資者の労務、知的財産、ノウハウなどを勘案して定めることができます。また、取締役会や監査機関などを設けず組合員間で柔軟に業務執行の管理のしかた決められます。なお、チームを組成して事業を進めるという前提ですので、出資者全員が何らかの業務執行に参加するものとします(この限りで投資事業組合のように出資者とファンドマネージャーの分離は対象とならない)
<以下 LLP(2)に続けます>
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