■ Back Number  ■ 2005年 4月 No.155
 
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【新会社法のポイント】
〜会社法の全面改正〜

 昨年のあたごレポートの速報、また昨今の報道でも話題になり、ご存知と思いますが、現在の商法の中の、いわゆる会社法について、全面改正し、内容についての改訂、用語の現代語化などを行うことにりました。
 改正についての要綱は法制審議会で諮問され、今年3月25日に閣議決定、現在通常国会に提出され審議中です。会社法の改正については、自民党の部会で検討中に例のニッポン放送株式問題が生じたことから、合併の規定の緩和関係について、にわかに外資等による敵対的買収につながる警戒が寄せられ、結局、この部分の施行についてのみ、他の規定より1年遅らせることで決着しました。
 国会の審議は、今年6月くらいに成立する見込み。この場合、一番時間がかかって来年の暮れごろに施行される見通しです(三角合併関係については再来年の暮れ)。

大きな特徴
 今回の改正は、これまでの商法典の一部規定の改正ではなく、抜本的な改正です。構成としては、商法の会社(株式会社・合資会社・合名会社)に関する規定と有限会社法を取りまとめます。有限会社の制度を全面的に廃止して、株式会社の制度に一本化します。株式会社は、上場会社と上場を展望するベンチャー型会社と、従来の同族会社的な典型的閉鎖会社とに二分されます。
 また、合資会社、合名会社の制度は残りますが、これらの人的会社と民法組合の中間のような合同会社の制度を創設し、LLP(有限責任事業組合)としての制度を導入します。

そのポイント
 詳細のポイントは、今後の「あたごレポート」で随時シリーズで説明をしていきたいと思いますが、今回はそのポイント中のポイントを説明。
1 会社制度の規律見直し
@ 株式会社と有限会社を1つの会社類型(株式会社)に統合。
 譲渡制限のある会社は、取締役1名で足りる。取締役の任期は、従来どおり2年間であるが、譲渡制限会社の場合、定款で任期の伸長ができ最高10年間とすることができる。
これにより、実質的に有限会社と同じような構造を作ることができる。
 譲渡制限を設置しない会社は取締役会を設置しなければならない。
 取締役の法的性格は、現在の有限会社と同じように各取締役が会社の業務執行権・代表権を有する。
A 設立時の出資額規制を撤廃し、最低資本金制度を見直す。
 これにより1円の資本金でも株式会社が設立できる。現在の最低資本金特例により設立された会社は、5年後の最低資本金額までの増資の義務を免れる。
 現在、設立や増資の際の資本金の払込みには、金融機関の払込金保管証明書を必要としたが、改正後は残高証明書等の方法によりこれに替える。
 事後設立の検査役の調査制度は廃止する。
B 取締役会を設置する会社は、監査役(監査役会)または三委員会(指名委員会、監査委員会、報酬委員会等)のいずれかを設置しなければならない。
 株主総会の招集地の制限(本店所在の行政区画)は廃止。
 取締役の解任決議は、普通決議とする。
 共同代表の制度は廃止。
C 監査役は、業務監査と会計監査の両方の権限を有することを原則。譲渡制限会社は定款で監査役の権限ほ会計監査のみに限定できる。業務監査権限のある監査役のいない会社は、株主が代って、実質的に業務監査役を担う。
2 会社経営の機動性・柔軟性の向上
@ 組織再編行為(合併・会社分割等)に係る規制の見直し
 合併等対価の柔軟化、簡易組織再編行為にかかる要件の緩和
A 株式・新株予約権・社債制度の改善
 株式の譲渡制限に係る定款自治の拡大。ある種類株式のみの譲渡制限を可能。定款で、譲渡制限株式について相続や合併による承継の場合も取締役会の承認の対象とすることができる。
 自己株式の市場売却の許容。株式の消却は、自己株式の消却という制度のみに整理する。
 会社に対する金銭債権による現物出資の場合、検査役の調査を省略する。
 株券は定款に定めがあるときのみ発行する。株主割当増資にかかる新株引受権証券は、無償の新株予約権割当に吸収する。株主割当増資の失権分の再募集は認めないものとする。株式申込書の制度の廃止。
 取締役会を設置しない会社、合名会社・合資会社・合同会社でも社債を発行できる。
B 株主に対する利益の還元方法(利益配当等)の見直し
 配当の回数制限の撤廃。取締役会限りでの利益配当等の決定の許諾。
 端株制度は廃止。
C取締役の責任に関する規定の見直し
3 会社経営の健全性の確保
@ 株主代表訴訟制度の合理化
株式交換等によっても株主たる地位を失って原告適格を失わない措置。
A 大会社における内部統制システムの構築義務化
B会計参与制度の創設
 主として中小企業の計算書類の正確性向上のため任意設機関としての制度創設。公認会計士または税理士がなる。責任や位置づけは取締役と同様。登記する内容であり、株主代表訴訟の対象にもなる。
4 新たな会社類型として合同会社の創設
 日本版LLP(有限責任事業組合)。社員(従業員ではなく出資者・構成員のこと)の有限責任確保。内部関係は民法組合に近い規律。外部関係としては法人。定款または社員全員の同意により一部の社員を業務執行社員とすることができる。法人も可。合同会社は法人としてB/S、P/Lを計算。法人格があるので、社会的信用度もあり、有限責任で経営の自由度も高く、小規模で安定経営の事業に利用しやすい。特に研究を持ち寄るベンチャー型グループの組成などに利用が広がる見通し。
 合同会社、合名会社は社員が1名になっても存続可能。合同・合資・合名の各会社は、社員全員の同意により株式会社に組織変更できる。
5 その他
 類似商号等の規制、目的の明確化等の規定は廃止。支店登記の記載内容の簡素化。

 以後、詳細はテーマごとに分けて、随時解説します。
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