■ Back Number  ■ 2005年 4月 No.152
 
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【不動産復活か】
〜今年の公示価格の特徴〜

 今年度の公示価格が、3月23日に発表されました。全国平均の数字としては、14年連続の下落ですが、下落率が下がるとともに一部の大都市圏では上昇地点も出るなど、変化のきざしが見え隠れしています。

数字の特徴だけで比較すると住宅地は、バブル前の1986年とほぼ同じ水準になりね商業地も過去十年で最低の水準を更新している。その一方で、東京の港区、渋谷区、千代田区、中央区、新宿区などでは、住宅地が1.5%、商業地は0.5%上昇となっている。
 5年ほど前から、世田谷区や大田区などの高級住宅街の土地をミニ開発し、安くなった地価を背景に住宅地の販売が活況になるという傾向がでてきている。地価が安くなったことで、同じ予算で、より職場に近い都心の物件に手を出すことができるということであるが、加えて高級住宅街などその土地の持つステータスも魅力になった。また、そのような土地では、スーパーなどの食料品店、学校等の教育関係と生活のグレードを高め満足させる生活インフラが充実をしているということも見逃せない魅力であった。
 この傾向は、再び戸建開発の原動力にもなったわけで、それが近年の都心の大型マンション開発競争へとつながる。品川の海側、港南地区はマンションの激戦区となっている。今回の公示価格発表によると東京都武蔵野市、千葉県浦安市、千葉県千葉市美浜区の住宅地がトップクラスで上昇している。いずれも、生活のインフラが整備され、整然とした街づくりがされている地域である。浦安市は、ディズニーランドの立地のある土地で、オリエンタルランドからの税収が厚く、その結果、行政サービスの充実度が高いという。例えば、保育施設の充実が働きやすい環境を誘発するほか、教育の充実が高度で安全なきょういくかんきょう充実が働きやすい環境を誘発するほか、教育の充実が高度で安全な教育環境を求めるニーズと合致し、人気の高い地域となっている。千葉市美浜区は、幕張メッセのある幕張副都心をかかえる地域で、これも税収効果による行政の充実、新興的な高層住宅の整備などが人気の元である。

目黒、世田谷、太田などの各区は、ほぼ横ばいが上昇という傾向で、都内は、底入れ感゛か強い。
 地方でも札幌のベットタウン開発で上昇しているところが目立つほか、なんと言っても愛知万博やトヨタの好況などで目立つ名古屋地区の商業地の上昇などが特徴的である。

 では、再び地価は上昇していくのか?最近の傾向では、収益性の高い商業地、利便性の高い住宅地など、付加価値の高い物件に人気が高い。つまり、土地そのものではなく、ビジネス環境とか住環境、それは、単に通信設備が充実しているとか交通の便がよいとかというような単なる利便性ではなく、行政サービスが充実しているとか取引先が近いとかインフラ的な要素が強い。強いては、その街自体の行政や企業の取組の実績如何にも係っている。
 他方、このような物件の担い手として投資家の存在が重要な要素となっている。この投資家は、不動産投資ファンド。単に近くの地価が高くなったなどということは問題なく、投資対象の当該物件の利回りがどれだけ効率的かが左右する。04年末現在の運用資産残高は、リート(不動産投資信託)は前年比62%増の2兆764億円、私募ファンド前年比2.2倍の2兆2000億円。トータルで4兆円を超えるが、その大半は充実した運用先を見つけられずに物色が続いているという。つまり、運用先が見つからず、金余りとなっているが、これらのファンドはそこそこの利回り実績を示して、つか期限までに償還しなければならない。勢い物件獲得競争は激化する。
 今後、あふれた余剰資金は、地方の優良物件獲得へと動くと見られる。ここで、その動きを占う要素として、民間でも行うことができるようになつた信託業を利用して小口案件の獲得ができるかである。今までは、信託銀行などかロットの大きいものしか採算が合わないとして手がけてなかった。しかし、地方には1億から数億円規模の優良物件、しかも不良債権処理により生み出される物件が多数ある。これらの処理=開発メカニズムを創出できると一気に爆発する可能性がある。もう一つが、今年見直しの一環として創出される事業用定期借家権(今国会提出予定)。事業用物件につき、地方でも定期借家権として手段が浸透すると投資の対象として追い風になる。世の中は同じようには戻らない。螺旋階段のように少しずつ要素を変えて戻ってきている。かっての土地神話と同じ発想でまた取り組む場合は失敗し、収益=利回りという新しい物差しで発想し行動できる人が次の担い手となるであろう。
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