■ Back Number  ■ 2003年 3月 No.130
 
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【非営利法人】
〜NPOをめぐる話題〜

 現在、政府において非営利法人を一本化する案が検討されています。俗に公益法人とか特殊法人とか呼ばれているものを一元化しようとするもので、公益法人の制度ができてから久しく行われなかった抜本的改革です。
 今のところ、政府部内で5月くらいまでに検討案をまとめ、来年の通常国会で改正を行いたい方針です。

そもそも公益法人とは?
 法人という制度は、自然人に対して法によりあたかも人と同じようにみなされる権利主体のことで、ある団体に個人と同じように権利の主体としての位置づけを与えるものです。その規定は民法に規定されています。民法においては、法人は、ある事業目的をもってその目的の範囲内において認められるもので、その内容により主務官庁の許可により設立するものとされています。
 法人に至らない団体は、単なる人の集まりでしかありません。自治会とか同好会は、人の集まりで法人ではありません。ただ、社会生活上一体性を求められるケースの高い団体で、団体としてさまざまな活動を求められるケースが多いので、このような団体を権利能力なき社団といって一定の法的構成を説明しようとしています。一方、ファンドのように組合を組成して運営するケースもあります。この組合にしろ、権利能力なき社団にせよ、いずれも法人ではありません。
 民法では、主務官庁の許可を得て設立され、民法で規定している要件を兼ね備えた団体を法人としています。このうち、人の集まりに力点をおいた法人を社団法人、財産の構成に力点をおいた法人を財団法人として構成しています。例えば、学校関係とか教育関係に関する財団法人を設立しようとする場合は、教育関係の主務官庁は文部科学省ですので、同省の許可があってこの財団法人の設立ができるというわけです。
 法人の制度はこれが原則。あとは特別法によりさまざまな法人の設立が形成されています。普通の営利法人、つまり我々がよく知る株式会社、有限会社、合資会社、合名会社は、商法及び有限会社法という"民法の特別法"により規定されています。これらの法人は準則主義で主務官庁の許可は必要なく、一定の条件が整えば法務局の登記によって成立することになっています。営利法人が民法の特別法として構成されているなごりとして、例えば仮取締役の選任、新株予約権の払込銀行の変更、検査役の選任、解散の届出、清算の報告など裁判所に対して行わなければならないことにしているのも、あくまで法により設立されているもので、自然とできているものではないということの表れです。
 医療法人は医師法、学校法人は学校法人法、特定非営利活動法人は特定非営利活動促進法、中間法人は中間法人法で、それぞれ特別法として規定されているわけです。(なお、前出の自治会や同好会などは中間法人として法人化する道ができています)

非営利法人とは?
 ところで非営利法人というと特定非営利活動法人とどう違うのと思われる方も多いと思います。日本ではNPOというと特定非営利活動法人を差すものだと思っておられる方が多いと思いますが、実は正確には社団法人、財団法人、医療法人、学校法人、宗教法人、中間法人などを含めたものを非営利法人と呼び、これらを含めたボランティア団体すべてをNPOとよびます。医療法人とボランティア団体は一緒かと思われるでしょうが、NPOの意味は利益を分配しない組織という意味で、収益を出資者などに配当などの利益を分配しないで、その団体の事業の活動に資する団体のことをいいます。NPO法人も中間法人も医療法人も学校法人も社団法人も財団法人も利益を配当などで出資者や寄付者に分配してはいけない構成となっていますので、これをまとめて非営利法人と呼ぶわけです。民間の普通の団体も広義のNPOに入ります。例えば「たまちゃんを見守る会」とか「たまちゃんを助ける会」もNPOなのです。
 ところで利益を配当しない団体ですから、非営利団体ということで公共性があるということになっていますが(だから公益団体と言われている)、こういうと構成員が手弁当で皆さんのために奉仕しているように見えますが、従業員に給与や協力者に外注費は払えますから、感覚としては本当に公益なのか怪しいところもあります。

非営利法人の一本化とは
 ところで、ここにきて一本化をなぜするのかというと、根拠法律が民法だったりさまざまな特別法だったりと煩雑であること、許可の権限のある官庁も多数に上ること、また特殊法人改革をしていく必要もあること、もともと後から付け足すように特別法が次々とできたことなどから整理が必要であるということになりました。

なかなかスムーズに進まない
 当初の案としては、これらの法人を非営利法人として位置づけ、一定の条件が整えば準則主義として法人格を与え(つまり許可や認可は要らない)、特に公益性のある事業については別途申請に基づく検討により特別な扱いを与えることするものでした。
 が、ここにきていろいろ横槍が入ってきています。まず、宗教法人を入れるのかという問題。これは政治的な問題がありまして、現在の与党の一部を構成している政党の背景に宗教法人があるため大変ナイーブな問題となり、ここの部分は早くも棚上げとなりました。
 次に「公益」の位置づけ。何が公益かという線引きが難しいこと。実は、公益を掲げた法人だというイメージの問題だけでなく、税金の問題もかかるからです。
 現在、公益法人とNPO法人は、非営利の活動にかかる収益は非課税扱いとなっています。今般の改正が行われると一旦は普通の法人同様に課税されることになり、そのうち公益性が認められた法人については非課税となるということになり、NPO法人を中心に強い反発があります。現在、自民党などでの案では、NPO法人を含めるのは段階的に後にしてという棚上げを検討しているようです。
 いずれにせよ、非営利法人についてのとりまとめはされるのでしょうが、その内容についてはまだ変遷がありそうです。特に一般のNPO法人、中間法人を運営している皆さんにも大きく影響のあるところですから、これからもウォッチしてください。


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