■ Back Number  ■ 2002年 12月 No.126
 
2003年
2002年
2001年
2000年
 
【注目されるグリーンシート市場】

 このごろ「グリーンシート市場」について日経の記事に掲載されるケースが増えています。実は、今年を振り返るとジャスダック、マザーズ、ナスダック(12月16日からはヘラクレス)の振興市場への上場が先細り傾向にあるのに対して、グリーンシート市場への登録件数が増加しており、数だけでいくと東証マザーズに匹敵する規模になろうとしています。このため、にわかに注目をあびることとなり記事になるケースが増えたわけです。
  現在、このマーケットを他の振興市場並みに整備しようと金融庁も動き出しており環境が少なからず変わってくる気配となっています。今回は、このグリーンシート市場について検討してみましょう。

グリーンシート市場とは
 このあたごレポートのご贔屓の中にもグリーンシート登録企業の皆さんや支援の方も大勢おられるので釈迦に説法ですが、まずグリーンシート市場とはどういう市場なのかというところから説明しましょう。
 グリーンシートとは、日本証券業協会が平成9年7月から未公開企業の株式の売買をするためにスタートさせた制度で正式には「気配公表銘柄制度」といいます。
 ジャスダック等の振興市場は証券取引法で定められた証券市場であるのに対して、グリーンシートは日本証券業協会の規則で定められている制度上の証券市場です(なお、ジャスダックを開設したのは日本証券業協会です)。未公開企業への資金調達を円滑ならしめ、また投資家の換金の場を確保する目的で創設されています。
 当初は未登録・未上場の株式の流通性の向上のために作られた制度でしたが、その後の規制緩和や国の審議会等の提言などによりさまざまな発展的変遷をとげ、今日では振興市場に次ぐ制度として大きな位置づけとなっております。

ベンチャーの市場はエマージング市場
 平成12年7月から3市場区分を導入して性格を分けています。「エマージング銘柄」は新興ベンチャー企業の区分。「フェニックス銘柄」はかって上場していたが上場廃止となったものの、依然多数の株主が存在しており。これらの取引のために必要な市場で上場廃止企業の区分。「リージョナル銘柄」は上場はしていないものの地方の老舗や中堅企業などの区分となっています。新聞等で注目されているのはこの「エマージング銘柄」です。
 グリーンシートの登録銘柄になるには、いまのところ振興市場のような上場基準に当たるものはありません。ただ、成長性が期待できること、振興市場の上場と比較して健全な財務内容である必要があります。すなわち、一般の投資家の資金が流れるため上場審査と同様に財務の健全性、会社内部の決裁体制の明確化や管理体制などが問われるからです。そのような条件に合う企業が対象となり、まず証券会社において登録のための審査が行われ、証券会社から日本証券業協会に会社内容説明書を提出して届出が行われ、登録、募集の開始となります。日本証券業協会に提出すべき書類等については規則で定められていますが、これまでは過去2年間の財務関係の資料を要求されたのを平成14年2月からは直前1年分でよいことになったことから、俄然登録企業が増加する傾向となりました。

最近の傾向
 平成14年12月16日現在でエマージング銘柄の登録数は40銘柄(うち1件は不動産投資信託)。登録の新規銘柄数は、平成9年22銘柄、10年10銘柄、11年10銘柄、12年10銘柄、13年5銘柄、今年は9月までで17銘柄あり、現在5銘柄が公募募集中の状況です。今年3月から9月まで公募した15銘柄の調達合計額は8億2662万円、調達平均額は5511万円。最高が9900万円、最低が2650万円でした。
 業種はITだけでなく、印刷業、出版業、自動車部品販売、菓子製造販売など多岐にわたっています。なお、市場全体の月間売買高は、平成13年中では4億円から4億6千万円台がありましたが、今年では3月ごろに1億6400万円台があるものの6000万円から9000万円台です。ただし、この売買の中には公募による新規募集の取引も含まれています。 グリーンシート銘柄を扱う証券会社は、ディー・ブレイン証券がメインという状況ですが、他に東洋証券、泉証券、ジェット証券、新光証券、UFJつばさ証券など16証券会社です。

公募は楽か?
 さて、では公募に応ずる投資家はどんな内容でしょう。これまではメインでこの市場をリードしたディー・ブレイン証券で主催するVIMEXクラブの会員という形で個人会員を構成し、このメンバーが応募していましたが、最近ではむしろ経済環境の悪化のため個人投資家の応募は少なく、登録企業の取引先等に営業をかけて応じてもらう傾向が強くなっています。つまり公募の形をした私募のような状況で、公募の募集展開の戦略についてはいろいろと議論がありそうです。調達額の差もはっきり言ってこの辺の根回しが十分にできているか否かが勝敗を分けています。

環境変化のきざし
 金融庁の懇談会では「未公開企業のグリーンシートの利便性を向上させるためさらに見直しが必要である」と今年7月に指摘され、8月には同じく金融庁から証券市場の構造改革の第二弾としてグリーンシートのかくじゅうの拡充を検討し、年内に結論を出すよう日本証券業協会に要請が出ました。グリーンシートを証券取引法における証券市場に持っていくとする、かっての店頭市場と同じような方向付けが動き出しており、関係者と金融庁との協議が断続的に続いています。それらを想定して証券市場と同じように保管機構銘柄とするため、来春までに関係する事項の整備の作業が始まっています。

当事務所も支援
 実は、当事務所も法的事務の部分を全面的に協力しており、グリーンシートとのかかわりも3年以上になります。今年登録の銘柄でも募集予定を含めて10件以上となります。当事務所では登録前に整備する資本政策にかかる株主割当増資、株式分割、ストックオプションなどの手続きのほか、現物出資にかかる検査役選任手続きなどを行っています。特に新株予約権や議決権制限株式は改正商法後早々に利用することになり、まだ他で事例のない中で指導いたしましてパイオニア的な存在であります。



 グリーンシートが証券市場化するということになるとステータスはぐっとあがります。環境は整備されつつありますが、やはり個人投資家をどこまで引き入れることができるが最大の鍵でしょう。

▲ページTOPへ

Copyright(c) 2002 愛宕法務経営事務所