■ Back Number  ■ 2002年 11月 No.125
 
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【中小企業挑戦支援法】
 この秋の臨時国会において経済産業省−中小企業庁からの政府提案で「中小企業挑戦支援法(中小企業等が行う新たな事業活動の促進のための中小企業等協同組合等の一部を改正する法律)」が衆参両院で可決成立しました。施行日は未定ですが、公布の日より3ヶ月以内に施行することになっています。

 大きなポイントとしては、
1. 株式会社、有限会社の設立にあたり最低資本金等商法の規制の特例
2. 企業組合設立の規制緩和
3. 有限責任投資事業組合の投資対象の拡大

これらにより創業・新事業への「挑戦」を容易にさせ、資金調達面においても「挑戦」に必要な資金供給源の拡大を促すことを目的とします。

最低資本金等の商法上の規制に関する特例
 これは「新事業創出促進法」の改正で対応されます。
 新事業創出促進法でいうところの創業者、すなわち事業を営んでいない個人が新たに事業を行う場合、事業を営んでいない個人が新たに会社を設立し、新たに設立された会社が事業を開始する場合と経済産業大臣から確認むを受けた者は、最低資本金(株式会社の場合は1000万円、有限会社の場合は300万円)規制の適用を受けない会社設立を認め、設立後5年間は当該規制を受けない。
 あわせて払込取扱機関の保管証明を受ける義務も免除。ただし、債権者保護のため財務資料の経済産業省への提出、配当の制限などがある。
 これにより会社設立時点での資本金集めなど創業のハードルを緩和、設立に係る手続きの簡素化によりサラリーマンや主婦などが無形財産やアイディアなどのソフトのような経営資源によって創業することを容易として「挑戦」を支援する。
 現物出資等については検査役の選任を必要とする要件を本来は設立時の資本金の5分の1以下でかつ500万円以下とあるのを、今回の特例では「200万円以下」としています。つまり、資本金における割合制限がないので、例えば資本金200万円で、その全部を例えば知的財産権の現物出資で設立してもよいということを意味します。
 以上の施策により、創業という形で認定が得られるのであれば、小規模であっても株式会社、有限会社を設立できることになり、ベンチャーとして独立開業するチャンスが拡大するといえます。この制度で設立しても立派な株式会社ですから、社債や新株予約権の発行もできますし、よりダイナミックな資本政策が可能となるといえます。
 また、株式会社の場合、資本金が1000万円に満までの新株発行は、銀行等の保管証明提出義務の免除がなお続きます。
 これらの規定は、有限会社の場合は300万円、株式会社の場合は1000万円の資本金を超えたときは、普通の会社として通常の手続きを行うこととし特例は適用されないとしています。
 また、この特例は5年間の時限立法なので、設立後5年以内に商法で規定している最低資本金をクリアーしなければならず、達成できないときは解散か合名会社にならなければなりません(300万円以上あれば有限会社への組織変更は可能です)。

企業組合の要件緩和
 最低資本金制度がなく有限責任で法人格を得られる制度の中に中小企業等協同組合法による企業組合制度があります。事業共同組合というもので、小規模企業などが組合となって共同受注をしたり共同生産をしたりしてスケールメリットを求める方法に使われています。
 今回、この法律を一部改正して、企業や有限責任組合の参加を認め、従事比率、すなわち実際に仕事に従事しなければならない組合員の比率の規制を緩和しました。これにより企業組合の設立の機会を増やし、地域貢献型事業から先端技術開発事業まで幅広い分野のチャレンジの機会の増加と雇用の拡大を狙います。

有限責任投資組合の要件緩和
 ベンチャー等への投資ファンドとして投資事業組合というスタイルがあります。これを投資をもっと活発に行えるよう、組合員に有限責任で参加できるようにし、そのファンドを登記して明示できるようにしたのが、中小企業等投資事業有限責任組合法ですが、これを一部改正し、投資の対象を従来の株式会社から有限会社や企業組合にも拡大し、株式投資だけでなく、中小企業が営む事業から生ずる収益の分配を受けるための投資(例えば信託受益権取得等のプロジェクトファイナンス)も可能としました。
 立法の意図としては、将来株式会社に育て上げるベンチャー型有限会社を対象とすること、法人そのものに加えて知的財産権や先端技術、ノウハウなどの育成にもっとも効果のある投資の導きなどにあります。
 逆に言うとベンチャーから見て資本以外の多様な資金調達方法の提供を促す意図であります。

何でもありの政府
 政府筋の情報によりますと、10月中旬の自民党の総務会で本件改正案の了承がされています。席には中小企業庁長官らが説明のために訪れており、本件成立後に商工中金を利用してさまざまな制度融資を設計する方針も合わせて報告されたとのことです。信用保証協会の保証融資を拡充させるため信用保証保険の拡大も国会で成立していますが、これまでの保証協会融資では限界があると見たか、最近は商工中金にその役目を負わせる傾向があるようです。どのような制度ができるのかはまだ不明ですが、政府の意図としては、つまりどんどん新しい事業を起こさせて、雇用を吸収させたいということであり、なにやら数年前の小渕内閣時代の雇用の助成金や創業支援融資の拡充のときと、またもや同じ轍を踏むのではという懸念もあります。
 その辺はともかく、新制度ができたうちがチャンスで、問題企業や不正利用者がでないうちに早いもの勝ちで利用すべきでしょう。
 施行は公布後3ヶ月以内ですので、少なくとも来年2月ごろにはこの法律の利用が可能となるはずです。独立を考えている人にはやはり朗報といえます。但し、他で会社を興したり、事業をしている人は対象となりませんから念のため。

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