■ Back Number  ■ 2002年 10月 No.123
 
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【米国型経営スタイルの利用】

−委員会等設置会社の検討−
先般の通常国会で成立した来年4月施行の商法改正においた「委員会等設置会社」すなわち米国スタイルの経営の採用が可能らなりました。

1 14年6月改正の委員会等設置会社に関する中身(15年4月施行)
 商法特例法上の大会社、みなし大会社は、経営体制を三つの中から選べる
→ ・従来の経営体制 ・委員会等設置会社 ・重要財産委員会設置会社
* みなし大会社
 大会社 資本金5億円以上または負債の額が200億円以上の会社
 大会社以外の会社で資本金1億円以上の中会社について会計監査人による監査を受ける等の商法特例法上の大会社の特例の適用を受ける会社を大会社にみなす
→ 貸借対照表、損益計算書を取締役会限りで確定できる重要財産委員会に取締役会の決定権限の一部を委任できる委員会等設置会社になることができる

2 委員会等設置会社
 定款の定めによって各種委員会、執行役の制度を導入し、取締役、取締役会の職務、権限責任を委譲できる
・ 取締役会中に、いずれも社外取締役が過半数を占める指名委員会、監査委員会、報酬委員会の三委員会を必ず設置する
・ 業務執行を担当する執行役を置き、監査役は置かない

 新株発行、社債発行、重要な使用人の選解任、支店設置統廃合、簡易事業再編、重要なる資産の処分または譲受などを含む取締役会決議事項につき執行役に決定権限を大幅に委任できる。
委員会等設置会社における取締役・執行役の責任は過失責任とする 利益配当は一定の要件の下で取締役限りで確定できる。
取締役の任期を一年とし株主の信任を得なければならない(執行役の任期も一年)
* 執行役 取締役会から委任された事項の業務決定と執行業務を行う。
選任解任は取締役会で行います。執行役は取締役以外の者を選任することができる。また、取締役から選任して取締役と兼務させることも可。
執行役制度を導入した場合、執行役でない取締役は、従前の業務執行取締役として業務執行することは認められない。
この制度を導入した場合、取締役会決議で代表執行役を選任しなければならない。
* 執行役と執行役員の違い
執行役は、委員会等設置会社でのみ商法で認められた業務執行を行う役員であり、登記もされます。
執行役員は、商法の対象外の役職であり、従業員の地位にあります。
執行役は商法の規定により広範な権限委譲がされますが、執行役員は限定的な扱いです。
* 社外取締役 その会社の業務を執行しない取締役であって、過去にその会社または子会社の業務を執行する取締役または支配人その他の使用人となったことがなく、かつ、現に子会社の業務を執行する取締役またはその子会社の支配人その他の使用人でない者(平成14年5月1i日以降に就任した者は登記しなければならない)

3 委員会等設置会社を選択するメリット
・ 取締役会で定めていた大半を大幅に執行役に委ねることことが可能
・ 各委員会の過半数が社外取締役でなければならないので、株主の意向が反映され透明性の高い経営を期待できる
・ 各委員会に大幅な権限委譲により、強力なリーダーシップを実質的に発揮できる経営者しかトップになれない
・ 監査役を廃止し計算書類の作成も専門の執行役が作成するので効率性を重視した経営体制を構築できる
・ 計算書類等は、会計監査人や監査委員会がチェックし適法な場合は利益処分案について取締役会の承認があれば、定時株主総会の承認があったものとみなされる。
・ 通常の取締役は無過失責任制だが、委員会等設置会社の場合は、取締役並びに執行役は過失責任。

4 ベンチャーにとっての委員会等設置会社の意味
(1) 対象となる会社 グリーンシート等で資金調達したり、VCよりの投資を受け入れて資本金が1億円以上となる会社で、会計監査人を設置している場合に実益がある。
(現行では大半のグリーンシート銘柄の企業においては、監査法人の監査は受けるものの商法特例法に基づく株主総会における会計監査人選任は行っていない)
(2) アメリカ型の経営スタイルの採用 株主の代表として選任された取締役により構成される取締役会  cf 種類株主

業務のプロによる会社経営の委託

業務成績の如何により続投を検討
◎ プロ野球の球団監督とフロントの関係に似ていると思うと理解しやすい

5 執行役に委譲できる権限
(1) 取締役会が自ら決定しなければならない事項。経営の基本方針、指揮命令関係、各委員会を組織する取締役、執行役の選任、解任、代表執行役、共同代表の決定、貸借対照表、損益計算書、営業報告書、利益処分案等附属明細書の承認、株主総会の招集、総会提出議案内容の決定、営業譲渡等の内容の決定、事後設立、など
(2) 執行役ができる主な事項 資金調達関係  株式・負債いずれの事項も取締役会から委譲できる。新株の発行、自己株式の処分、新株予約権の発行、新株予約権付社債の発行、社債の発行、多額の借財
事業再編関係
 重要なる財産の処分または譲受の決定を執行役に委譲できるので、資産リストラやM&Aを迅速になしうることが可能となる。
人事・組織関係
 重要な使用人の選解任など人事管理、支店の設置統廃合などを委譲できる。
簡易事業再編
 簡易な営業全部の譲受、簡易株式交換、簡易分割、簡易合併については、取締役会の委譲があれば執行役が決定できる。

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