■ Back Number  ■ 2002年 10月 No.122
 
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【電子契約法】

 皆さん、電子契約法という法律をご存知ですか?昨年の暮れから施行されている民法の特別 法で、正確には「電子消費者契約及び電子承諾通知に関する民法の特例に関する法律」といいます。
 いわばネット上における契約に関する取り決めですが、その内容は決して一部のネット業者に関わる話だけでなく、自分のホームページやサイトに設置した申し込みコーナーや依頼・相談の受託コーナーにも関係ありますし、利用者としても一般 的に関係する話で、決して他人事ではありません。また、従来皆さんが理解している契約法の一般 原則と異なる取扱いもあり、これまでまの法の常識だけで何とかなると考えていると思わぬ トラブルにもなりかねません。もっとも、本当にネット上のトラブルを対処するにはこの法律だけでは如何ともし難い部分もあり、今後の法的対処も望まれるところです。

電子契約法の内容
電子契約法の内容は大きく分けて二つです。
1 電子商取引などにおける消費者の操作ミスの救済
2 電子商取引などにおける契約の成立時期の転換

消費者操作ミスの救済
 B2C(事業者対消費者)の電子商取引では、消費者(一般利用者)側がマウスやキーボードの誤操作により意図しない申込みをしてしまうことが多々あります。その場合、民法では契約は無効となりますが、消費者の方に「重大な過失」がある場合は、その無効を主張することができないとされています。操作ミスは、利用者側がよくよく注意せずに安易にクリックしたと言われれば重大な過失があったという主張も通 る場合もあり、たとえばネット上の商品を「1個」買うつもりでも、誤って「11個」とインプットしてしまった場合に契約が有効か無効かが争われます。
 そこでこのようなB2Cの電子商取引において、事業者側が画面上の申込み手続きを設定するような契約については、事業者側が、消費者の申込み内容などの意思確認の適切な措置を設けない場合には、操作ミスによる契約を無効とする特則を設けました。
 ここで注意が必要なのは、B2Cの場合だということです。C2Cオークションなど個人間の取引は対象ではありません。電子モールへの出店の場合は、電子モールの管理者が出店している事業者から申込みの手続きを委託されている場合は、その管理者も含まれます。電子モールの場合、当該事業者のサイトにおいて取引した場合は、当然そのサイトの事業者が相手方となります。またここでいう電子商取引とは、ネット上におけるホームページ、Webサイトでフォーマットされたフォーム等を利用して行う取引であり、単にメールを利用した注文やファックスを利用した取引、携帯電話のiモードによる取引は対象になりません。
 ここの取引でいう「錯誤」とは、いわゆる押し間違い、入力間違いを指します。
 事業者が設定する確認措置とは、次のようなものを想定しています。「あるボタンをクリックすると申込みの意思表示となることを明らかに確認することができる画面 を設定すること(たとえば警告や確認の表示が現れるようにするなど)」「最終的な意思表示となる送信ボタンを押す前に、申込み内容を表示し、そこで訂正できる機会を与える画面 を設定すること(たとえば申込みを押すと次の画面で申込み内容の確認と訂正が必要ならば入力できる内容の画面 が表示され、再度同意の上で確認のボタンを押させるなど)」です。
 ただ、そのような警告画面を消費者(利用者)が積極的に排除したうえで、消費者の入力にミスがあった場合は、本法による保護にはなりません。しかし、誘導画面 で消費者が積極的に排除していないので、知らないうちに警告が出ないようにしていた場合などは保護されます。その場合、確認措置を消費者が積極的に排除したというりっしょう法による保護にはなりません。しかし、誘導画面 で消費者が積極的に排除していないので、知らないうちに警告が出ないようにしていた場合などは保護されます。その場合、確認措置を消費者が積極的に排除したという立証責任は事業者にあります。
 現在運用している、あるいはこれからサイトを作る方、またこのようなサイト作成を委託されている方もよく理解しておいてほしいと思います。

電子契約の成立時期
 民法では、隔地者間の契約について、承諾の通知が発信されたときに契約を成立させるルールとなっています。もっともこれは明治時代の世の中で取引を想定しており、ネットにはそぐわないものです。電子契約法では、承諾の通 知は瞬時に相手方に意思表示が伝わるため、契約成立次期を承諾の通知が到達した時点へと変更しました。
 ここでは電子的な方法により承諾の通知が伝達される場合に適用します。従って、電子メール、ファックス、テレックス、留守番電話です。携帯電話から相手のパソコンへのメールや、パソコンから直接相手方へファックスする場合など異なる機種同士の情報の伝達も含まれます。
 意思表示の到達とは、「相手方が意思表示を了知し得べき客観的状態を生じたこと」をいいます。例えば、電子メールの場合、相手方が通 知にアクセス可能な状態となった時点をいい、具体的にはメールサーバーのメールボックスに情報が入った時点となります。実際に相手方がメールチェックした時間ではありません。ですから、サーバーに到着して、相手方が何日もメールチェックしていかったとしても、サーバーへの着信時間が契約成立時期となります。
 ただしサーバーがダウンして着信しなかったとか、送ったメールが文字化けしていた場合は、意思の内容を了知できる状態ではないので承諾の到達の効果 は発生しません。
 ここでのポイントは、ファックスや留守電も対象となること、今度は事業者と消費者との取引などと限定されていないことです。
 電子商取引については、まだまだ法の不備があります。例えば、ホームページに詳細な約款を記載してトラブルの時の管轄裁判所を定めても、民事訴訟法上は、紙に記載した契約書をもって合意管轄を決められることになっていることから、一般 的な管轄となります。例えば秋田県の顧客とトラブった場合、秋田の裁判所が管轄裁判所になります。このような場合は、別 途契約書を郵送ベースで取り交わすシステムが必要となるでしょう。このようにまだ未確定な部分も多く、今後もさまざまな法整備がされると思われますから、引き続き注意してください。

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