■ Back Number  ■ 2002年 8月 No.119
 
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【土地汚染対策法】

 先般の通常国会において5月22日土地汚染対策法が成立しました。この法律は、特に人に健康被害を及ぼすと思われる土壌汚染のある土地対して対策を行うことを骨子とした内容になっています。
 一般の土地において直ちに対象になるケースはまず考えられませんが、今後、担保としての土地の評価や不動産評価のあり方、新しいリスク管理からの観点など見逃せないものがあります。  なお、施行は来年1月ごろと見られています。

土地汚染対策法の概要
 立法の趣旨は、土地汚染状況を把握し、健康被害防止の対策を実施し、国民の健康の保護を図ることにあります(1条)。しかし、マスコミなどで報道されるようなさまざまな土地汚染すべてが対象というわけではなく、これまでの水質汚濁防止法等で特定していたような物質と同じ、鉛、砒素、トリクロロエチレンその他の物質で、それが土壌に含まれていて、それが原因で人体に健康被害が起こるおそれがあることと限定し、これら水質汚濁防止法で指定されている特定施設に係る工場等の敷地であった土地や環境大臣の指定を受けた調査機関の調査により都道府県知事が土壌汚染により人体に健康被害が生ずるおそれがある土地と認められた土地が対象となります(2条〜4条)。特定有害物質、土地汚染の調査の方法については、今後政令、環境省令で定められることになっています。
 調査の結果、土地汚染の土地と判定されますと、知事は指定区域としてその土地を指定し、公示。さらに台帳を作成して閲覧に具するようにします。
 そのような土地に対しては、汚染の除去等の措置命令を出します。また、そのような土地の形質変更をしようとする場合、たとえば土地を掘り起こしてどこかへ持っていくなどの場合は、あらかじめ知事に届出を必要とし、その内容が不適切な場合は計画の変更を命令できます(5条〜8条)。

その沿革
 土地の汚染については、日本はかなりにぶく、農地につては昭和40年代にある程度の対策はありましたが、そこまで一般の敷地・土地についてはまったく考えが及んでいませんでした。一方、アメリカでは、土地汚染に対して敏感であり、土地汚染対策のためのスーパーファンドも作られている状況です。また、欧州では90年代、台湾でも2,3年前に土地汚染対策の法律が成立し、世界的に取り組みが行われています。
 日本の場合、土地に絡んでいるということで抵抗が強く、やっと今年になって対策法が成立しました。

土地汚染にメスが入るか?
 では、工場の跡地など土地汚染が懸念されるさまざまな土地が対照になるのかというとそうではありません。元々、水質汚濁防止法により特定有害物質の製造、使用や処理をしている特定施設と指定された工場等の跡地など、最初から国側が認定していて争いのないものからが対象ということになります。
 それ以外は知事の指定を受ける土地ということになりますが、まずその入り口として政令で定める特定有害物質は何になるかによって篩い分けられます。現段階ではダイオキシンが含まれるかどうかもわかりません。とにかく、汚染されていると言われようものなら土地の価値は落ちますし、膨大な対策コストもかかりますと、土地所有者にとってはリスクが極めて大きいですから、風評の被害だと逆に追及される可能性もあり、行政側としては、最初のうちの対応としては、この土地に特定有害物質が汚染されていることにまず間違いないととう決定的な事件が起こったような土地において、対象とし、ついで環境大臣の指定した調査機関によって調査のうえ、汚染地域として指定されるということになるでしょう。この扱いは、やはり環境省の省令によって決められることになります。指定を受けますと汚染除去の措置命令が出され、それについては補助や助成を国は出す方針ですが、これはあくまでこの法律で指定されている物質の除去しか対象になりません。
 従って、土地を購入して調べてみたところ、何らかの物質の汚染があったからといって必ずしも本法の対象にもならず、除去の助成の対象にもならないということになります。

環境リスク管理の必要性大
 しかし、この法律の施行が始まりますと土地に対するリスク管理の分野として環境リスクが加わることになります。
 法律だけでなく、各自治体における条令による制約もたくさん出始めています。現在、銀行の担保管理、会計における減損会計における評価対象、不動産鑑定などの分野で土地の環境汚染を損失とみたりリスクと評価する動きが出ています。こうなってくると、土地汚染対策法の対象になるか否かにかかわらず、土地取引や土地の所有・管理について環境汚染のリスク管理が必要ということになります。
 一方、既に日本においても土地汚染の調査会社は多数存在しており、これからの参入は厳しいものがあるといわれています。浄化ビジネスは今後は、金融や不動産取引との観点、事業戦略との関係など総合的な観点から検討した環境リスクマネージメントで勝負することになるでしょう。
 環境というファクターによる検証と分析がビジネスの部分においてかなり深くなってきたといえます。

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