■ Back Number  ■ 2002年 2月 No.106
 
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【介護の意欲】

 マスコミの連日の報道をみると、不況だ、経済は閉塞だと怒濤のような記事が続いていますが、街を歩いていると本当に不況なのか首を傾げたくなる光景をよく見ます。
 特に東京を中心に活況を呈している場所と衰退している場所と二極化が現れていることもあり、なおさらそう思います。
 例えば、仕事で遅くなった夜(あくまで仕事ですぞ!!)、ちょうど12時のJR千葉駅。私の住んでいる方向の電車は、ここから先は終了しているので、いきおいタクシーに並ぶことになります。改札を出ますと、タクシーを並ぶ列がもう改札の前まで並んでいます。この位 置からタクシーまでは、200m近くありますが、ここまでタクシー待ちが並んでいたのは、バブルのころで最近では珍しい光景でした。この日は、金曜日でもないまったく平日。残業で遅くなった感じの人も多いのですが、顔の赤い人もちらほら。しかし、よ見ると、大体私と同年輩から下の人たちが多く、おじさんグループはあまり見られませんでした。
 タクシー利用者が増えているということは、それほど深刻な不況ともいえず、しかし、そこにおじさんの姿が極端に少ないということは、これも現在の社会実態を如実に示しているようにも思われます。
 実際、渋谷、お台場、銀座、新宿、幕張新都心などの繁華街を訪れるとまったく不況というのはおかしいという気になります。しかも、大体二十代のカップル、三十代のファミリーが中心というのが特徴的でしょうか。

地方はどうか
 私は、介護事業を行うある特定非営利活動法人(NPO法人)の理事長を兼任していまして、このほど兵庫県姫路市にグループホームを立ち上げることになり、開所式やスタッフ採用の入社式に出席するため現地を数日間訪れました。
 地元の提携先の運営事業者の話によると地方の経済環境は深刻で、介護以外で有望な事業はないとのこと。建設関係は、まったく新規事業はなく、宅地開発もさっぱり、マンションもほとんど売れないという。マンションについては、昨年前半までは、マンションデベロッパーの活躍もあったそうですが、マンションの需要も飽和状態だという。
 地場では、これはという中心産業もなく、これまで頼りであった不動産・建設関係も閉塞間が強いという現状で首都圏の話をすると驚きの状況です。
 そういう背景もあり、介護事業に光を求めて介護事業に転身する動機となったようです。
 しかし、そんな思惑とは別に、地方において介護支援のインフラは少ないのが実状で、地方の自治体では、グループホームの施設建設には積極的な支援をしています。このような施設がない地方は、予想以上に多く、特に施設の運営を行い団体を渇望している状況です。
 また、少子化の影響、若手の都市部への進出のせいか、地方の高齢者の数も相当であるだけでなく、このような人々への介護の担い手が少ないというのも地方の悩みのようです。

真摯な担い手

 さて、施設の開所に伴ってスタッフの入社式に出席しました。スタッフは、今年専門学校や大学を卒業する新卒から元看護婦のベテランにいたるまで多様な人たちです。集合研修は、少し前から行われていて、施設の完成も伴って、また、利用者の募集活動も始まって、少しずつ現実感がでたのか、みんな緊張感が日に日に高まっているようでした。
 入社式は、特に管理者の配慮もあって、普通の会社のように式典を行い、一人一人に辞令を交付しました。新卒の人には一生に一度のことですし、年輩の人には何年振りかの感動となったようです。
 この人たちに理事長として辞令を一人一人に交付していますと、段々スタッフたちの真摯な気持ちというのが伝わってきます。本当にこの方たちは、真摯で介護の事業にこれから携わるうれしさ、喜びと期待というものがひしひしと伝わりました。東京の方ですと、やる気は伝わることはよくありますが、こういう真摯な気持ちを持ったスタッフに出会うということは希で、こちらも久しぶりにそういうチームにあったという喜びと、これは大変なことを始めてしまったぞという感じにもなりました。
 東京ですと、俗世にまみれているせいか、つい打算的になりますが、地方(のせいなのでしょうか)では、ストレートに我々に全幅の信頼のもと本当に介護がやりたいという真摯な気持ちが何より優先しているのがよくわかります。
 このチームの中には、福よかな笑みをただずえた年輩のご婦人がいらしていて、この人がまた積極的に中心になって雑用もこなして真摯に仕事をされています。どうみても五十代後半の方かと思っていましたら、何と六十代後半と言われて大変びっくりしました。余生を高齢者のための介護のために尽くしたいという希望で参加されています。
 私は、自分が中心になって起業だ創業だとガンガン引っ張っていく以外にもまだまだ力を込めて自己実現を果 たせる仕事があると確信し、また中高年の仕事のあり方にも何かヒントを得たような感じがしました。
 実際に本格的な高齢者を受け入れて介護サービスがスタートするのは、今月の後半からですが、私はこのスタッフたちがどのようにこの仕事をこなし、さまざまな課題を乗り越えていくか、大いに興味のあるところであります。

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