■ Back Number  ■ 2002年 2月 No.105
 
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【商法改正 (3)】

― 種類株式と新株予約権 ―
 昨年秋の臨時国会で議員立法により成立した商法改正により監査役制度の改正がされた。施行日は待っていないが、近々施行されるものと目される。中小企業に大きく影響するのは、監査役の任期です。任期は、現行の3年から4年になるのですが、この切り替わり方がややこしい。 改正付則には「この法律の施行後最初に到来する決算期に関する定時株主総会の終結前に在任するものの任期に関しては、この法律の施行後も、なお従前の例による」とされています。今年02年4月1日に施行されるとすると、3月31日決算の会社が施行後最初に到来する定時株主総会は、来年の6月の定時株主総会となり、この総会終結前に在任する監査役は任期3年ということになる。監査役の就任の時期は、定時株主総会終結後と されているので、今年の定時株主総会で選任された監査役の任期は3年、来年の定時株主総会で選任された監査役の任期は4年ということになる。
 また、改正法では、辞任した(解任は対象外)監査役は、辞任後に招集された株主総会において出席し、辞任の旨およびその理由を述べることができるとしている。従って、当該監査役には、その総会が招集される通 知を送らなければならない。
 さらに、取締役会が株主総会において監査役選任決議案を提出するときは、監査役(会)の同意を必要とする。
 以上の改正は、監査役をめぐって会社法務実務、株主総会招集実務にも影響が出るので、担当する関係者は、よく確認をしていただきい。

種類株式
 この4月に施行される改正商法においては、株式制度に関する改正がいくつかありますが、今回は、その大きな柱である種類株式と新株予約権と話をします。
 今回の特徴のひとつに種類株式の多様化があります。種類株式とは、資金調達の便宜を図るために、株式が均一の割当的単位 をとることに対して例外を法で認めた数種の株式で、利益配当、残余財産の分配請求権など、他の株式と異なる取扱を受ける株式のことです。これまでは、利益・利息の配当(優先株・劣後株)、残余財産の分配などに限られていました。また、利益優先配当株式についてのみ無議決権株式とし、その発行数は発行済み株式総数の3分の1以下としなければなりませんでした。
 ベンチャーの資金調達の多様性の目的として、投資家によっては、社内の議決権よりも投資冥利に目的が向いているケースも多く、高配当で上場時にキャピタルゲインが得られる株式なら途中の権利は関係ないという会社も少なくありません。アメリカなどでは、戦略的に種類株式を資金調達の手段として利用しています。こういった手法を日本の会社法にも取り入れようという発想で、改正が行われました。
 すなわち、議決権制限株式の発行制度の変更です。議決権を行使することのできる事項について内容の異なる数種の株式を発行できることになりました。また、議決権なき株式の総数は、発行済み株式総数の2分の1まで発行することができるようになりました。 議決権行使に内容の異なる株式とは、議決権を全部与えないという場合だけでなく、決議事項の一部についてのみ与え、他は与えないということもできるタイプの株式です。
 種類株式を発行するには、定款に種類株式を発行する旨、その内容、種類株式発行授権枠を定めなければなりません。議決権制限株式が認められたのでトラッキングストック(議決権制限条項と配当算定条項を組み合わせた株式)の発行も一層合理的となりました。
 種類株式を発行している会社で、定款にある議決事項については種類株主総会の決議を要する旨を記載することができます。種類株式は、議決権が制限されているので会社支配には劣後するようなイメージがありますが、実は種類株主総会の規定があると実質的にはこちらがイニシアチブをとります。例えば、取締役の選任や会社の重要事項について種類株主総会の決議を必要とするとすると、種類株主の同意なくして決定することができなくなります。アメリカではVCは種類株式の取得を常とし、投資契約において種類株主総会の定款規定や強制転換条項の条件などを決めます。強制転換条項は、今回の改正でも定められましたが、通 常は上場を達成したときなどに普通株式へ強制的に転換する条項ですが、例えばリードベンチャーが撤退して、他のVCが入るときに強制転換してポジションを入れ替えることにも利用します。
 種類株主総会と強制転換条項は、創業側、VC側双方にとって企業防衛、資本政策などの観点から重要な戦略手法で、この部分の研究を大いに行う必要があります。

新株予約権(1)
 紙面の関係でストックオプションがどう変貌するかは次回にして、新株予約権の発行について議論します。従来は新株引受権付社債(分離型)で発行しないとワラントは発行できませんでした。新株予約権は単独でワラントを発行できる制度と捉えてよいです。単独で出せますから、他の金融商品との組み合わせも可能で戦略的な資金調達の多様な手段になります。新株予約権は、取締役会で発行を決議します。取締役会では、新株予約権の内容や発行条件等を決議します。
 但し、譲渡制限会社で株主以外に発行する場合、株主以外に対して有利な価格で発行する場合は、株主総会で特別 決議を必要とします。新株予約権の発行価額(発行時の払込額) と行使価額(将来株式を取得するときに払い込む額)の合計額を株式の価額とすると定めています。そのため、有利な条件の価格とは、将来合理的に予想される株価が、新株予約権の発行価額と権利行使額の合計よりも下回るものとされます。但し、発行時において取締役会が合理的に予想される範囲でよく、その後、予想を反して高騰しても差し支えないとされます。なお、ストックオプションとして無償で新株予約権を発行するときも対象となります。そういう意味で、新株予約権の発行価額と権利行使価額の設定は、なかなか難しいものといわざるを得ません。
 新株予約権は発行後は当然登記を行い、新株予約権原簿を作成して管理します。また、必ず証券を発行しなればなりません。譲渡制限のある会社では、新株予約権の譲渡には取締役会の承認が必要です。
 また、今般の改正により転換社債と新株引受権付社債を新株予約権付社債とする抜本的見直しがされました。 (社債について、ストックオプションについては次号以降)

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