■ Back Number  ■ 2001年 12月 No.102
 
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【2002年の展望】
〜東京のベンチャーを中心にしたカルトな見方〜

 21世紀幕開け早々の2001年も当初の予想を遙かに越える激動の一年を描いてようやく終わろうとしています。
 手作業で案件データの集計をしていた昨年暮れから早一年、バタバタかけずり回っておだぶつさんになりかねない1年でしたが、あたごレポートのおかげでメジャーとなり、同時多発的な案件も無難に処理してもう安全ですと所内で宣言、1年を振り返って感動した!などと馬鹿な事をいっているうちに暮れも押し迫ってきました。
 この間に失業率は5.4%(10月)、デフレも進行し、12月の月例経済報告も日銀短観も経済状況は厳しいの1点ばりです。狂牛病の影響で牛肉関係の食材は打撃を受け、中国の旺盛な経済活動は、製造業の空洞化を招いています。
 どこをとってもいい話はないのですが、それは日本全体を観た話。当事務所の周辺、つまりベンチャー、新進の創業起業家の動きに焦点を絞ってみるとまた違った動きがみえてきます。ここでは、東京地区に絞った、かつベンチャー、新進事業に的を絞った観点で、来年の展望を考えてみます。

消費は回復している?
 第三四半期のGDPや日銀短観によると個人消費の力が弱まっているといいます。実際、第二四半期は個人消費の数字が良かったので、それが牽引していました。
 ところで、当事務所の顧問先である某中華料理店の場合、都内数店舗の月次の売上を観てみるとおもしろい数字が並んでいます。 こちらの場合、中国の一地方の食文化を紹介した店舗として若者を中心にして広く支持をえて好調な展開をしています。東京都内数店舗の売上推移は好調でしたが、9月の米国同時多発テロと狂牛病騒動で売上は減少し、大体いつもの2割程度減となりました。ところが10月になるとほぼいつもの月と同じ売上となり、現在も同様に推移しています。
 こちらの場合、ある地域においては、ファーストフード激戦区に店舗を出していますが、ファーストフードがデフレ対応として半額合戦をしているなか、内容で勝負し価格は従来のままで対応、結果として現在も他の店舗はがらがらなのにここだけは若い顧客でいっぱいという状況です。
 都内の百貨店も9月の売上は前年比でアップ、しかし10月は苦戦したもの、11月は再び上昇に転じています。これは、そごうが無くなって顧客のパイが増えたということもありますが、それぞれが専門性をいかして顧客のニーズにターゲットを絞った戦略が功を奏したという報告も寄せられています。
 私自身、9月から12月までお台場、銀座、千葉、幕張などの主要大型店舗などを観察していました。これらの売上データは手に入れていませんので断定はできませんが、若手を中心に大変な混雑で、とてもテロだの失業率が高いだのとの問題を抱えているとは思えない状況でした。
 これには注目すべき分析があります。都心の地価が下がり、またかって高級住宅街と座れたところも競売物件を加工して20坪前後の建て売りとして販売、マンションも手頃な値段で街のインフラも充実して交通の便もよい都内収容地域に30代を中心に回帰しているといいます。実際に30代夫婦を中心に人口は増加しており、保育園や小学校がパンク状態のところもあるとか。これまで都内なのに過疎化の心配もあった深川あたりや佃あたりもウォーターフロントとして息を吹き返し、新宿、港、渋谷あたりも急増しているといいます。逆に40代は、移りたくともバブル期に買った不動産を売却することもできず、動けないといいます。つまり、人口構成を含めた地場環境が急激に変わっていると言えます。30代は大体団塊ジュニア世代ですから、過去のしがらみに捕らわれず、新しいライフスタイルを築いています。現在、起業家という振興企業の社長も大半は30代後半ですから、感覚的にニーズを掴みやすいということもあるのでしょう。
 彼らは、サービスの質には高品位を求めます。質の高いサービス、おもしろくて楽しい環境の提供であれば、高いものでも納得してお金を出します。まず。この辺のところが第一の勘所でしょう。
 起業の支援も従来は直接金融等の資金づけでした。しかし、VCの方も、長引く不況、ネットビジネスの崩壊等で自信が無くなったのか、大手のVCの案件に相乗りするケースが出てきました。VCの能力の低下があるのが一方ですが、将来上場したときの市場の売却回収のことを考えていくとVCひとつで資金提供するよりシンジケート方式がよいという発想も背景にあります。ですから、内容がよい事業であれば、従来と違って複数のVCから合計して多額の資金の調達が実現しやすくなるとも言えます。
 その一方、企業の方では従来のように金ではなく、むしろ事業展開のチャンスを増やしたり、ジョイントしていきたいというアライアンスのニーズの方が強まってます。来年は、アライアンスとM&Aの相談に乗れないとお話にはなれないでしょう。商法改正により企業のあり方、企業群の考え方も柔軟になります。事業再編とワラントなどインセンティブ手法の駆使が今後の事業戦略の要となるでしょう。
 団塊の世代はシルバーの世代となります。来年まちがいなくブレイクするのは再就職ビジネス。都内のベンチャーは、必用な人が不足しているのは事実。ベンチャーにとっては買い手市場か。また、介護事業も2003年には介護報酬の見直しもあり、改めて介護事業進出のチャンスがあります。特にグループホームなど実質的に施設型の介護事業が少なく各地の自治体も支援に力を入れているのもチャンスです。薬事法改正の話もあり、中小の薬メーカーの株式交換、会社分割も活発化しそうです。薬剤師が不足しているのに目をつけて人材派遣につなげることもできるでしょう。
 建築分野もコスト削減ビジネスなどユニークな切り口もあり、PFI事業と介護事業のドッキングなど期待できる要素があります。
 こうしてみると、2002年は、既に期待できる材料がたくさんあることがわかります。GDPや短観というような国家的な経済の数字が、多種少量生産主義、地域ごとの活性化の時代に意味があるのか、マクロも大事ですが、ミクロもかなり重視すべき時がきたのではないでしょうか。秋から暮れにかけての数字がその可能性を物語っています。
 来年もよい年を!
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