■ Back Number  ■ 2001年 12月 No.101
 
2003年
2002年
2001年
2000年
 
【商法改正(2)】
 またまた商法改正案の成立となりました。今回は、臨時国会において継続審議されていました取締役の損害賠償責任について一定の上限を設けることとなり、今回の改正は、まだ施行前の来年4月施行予定の商法改正の改正となります。これには、株主総会の決議内容や定款の条項などに関係し、今後上場を検討する会社にも無縁なものではありません。いずれにせよ、かなりややこしくなってきましたので、あたごレポートでよく整理してください。

12月5日成立改正案のポイント
(1)  取締役の会社に対する責任の軽減 社外取締役を除く取締役につき報酬額の4年分(社外取締役は2年分)、代表取締役につき報酬額の6年分を会社に対する賠償責任の限度額とする。賠償責任を軽減するには、株主代表訴訟が提起されてから株主総会で軽減を認める場合とあらかじめ定款で軽減する権限を取締役会に授与する場合と二通りある。総会決議の場合、特別決議により可決しなければならない。取締役会の決議に対しては、持ち株比率3%以上の株主は異議を唱えることができ、異議が出た場合、取締役会の決議は取り消される。
(2)  大会社の監査役について、半数以上を社外監査役とし、その社外監査役の要件を「その就任前に会社又はその子会社の取締役又は支配人その他の使用人となった事がない者」とされた。
 監査役の任期は、4年となった。また監査役の取締役会の出席義務、必要に応じて意見陳述義務も加わった。
 施行は公布の日から1年以内となる。

商法改正によりまず何をしなければならないか
 今年10月の会社法第一段の改正によりまず、定款の変更の手続きをしなけれはなりません。ここでは中会社以下の話を中心に展開しましょう。
 額面株式が廃止となりましたので、通常の会社が採用している「当会社が発行する額面株式1株の金額は金5万円とする」との記載は削除します。また、まれに「当会社は額面株式のみを発行する」と記載している場合もありますので、これも削除または変更しなければなりません。
 次に、単元株制度がスタートしました。単元株を採用しなくても、商法においては従来1株をもって1つの議決権としていたのを1単元をもって議決の個数としました。これにより従来議決権のある株式総数を基準にしていたものを総株主の数を基準にするものに変えることになります。
 例えば「取締役の選任決議は、議決権ある株式総数の3分の1以上にあたる株式を有する株主が出席し、その議決権の過半数で行う」としたものを「取締役の選任決議は、総株主の議決権の3分の1以上を有する株主が出席し、その議決権の過半数で行う」と改めなければ成りません。
 また、グリーンシート市場に登録している企業などは、株式取扱規則を制定しているはずですが、端株制度の規定の変更等に伴い端株主の権利の条項や端株券の不発行の規定の削除など改正が必要です。
 なお、現実に株券を発行している会社において、既に額面株式を発行している場合、株券を交換する必要があるかという問題があります。改正商法ではそこまで要求していないので、無額面としてみなしの扱いはできます。ちろん、取締役会の決議で交換することは可能で、各会社の裁量によります。
 また、商業登記において「額面株式1株の金額」が登記事項として登記されていますが、これは職権で抹消されていますので、わざわざ登記をする必要はありません。しかし、転換社債や新株引受権付社債において発行する株式の内容の記載までには手が及んでいませんので、必要とあれば直してもよいでしょう。

決議の手続きについて
 商法改正に伴う定款の改正については、株主総会を開催する必要があるかという問題があります。本来、定款の変更は株主総会による決議が必要であると商法で規定されています。法律の改正による定款の変更は株主総会の決議は不要との見解もありますが、従来の大多数の会社の事例でみると改正後最初に到来する定時株主総会において定款変更案を付議しています。
 今回の改正内容も、定款において改正が済んでいなくても改正商法の内容にみなすことになっていますので実務的に定時株主総会まで改正されいなくても実害はありません。
 なお、株式取扱規則は取締役会での決議ですので、取締役会において改正します。

株式分割の決議
 なお、株式分割について、従来の株式の大きさの制限が無くなったので、1株あたりの純資産を検討せずに分割することが可能となりました。これでベンチャーなどの場合は、1株あたりの金額が大きくなって私募等で募集するときもネックになるものが、分割によって応募しやすい金額になります。
 株式の分割は取締役会の決議によります。 これまで株式の分割を行うと授権枠との関係が問題となり、結局株主総会を開催して定款を変更して授権枠を変更する必要がありました。今回の改正ではもこのような場合の授権枠変更は、株式分割の割合に応じて授権枠を変更する場合は取締役会の決議でよいことになりました。例えば1株を10株に分割して株式を10倍するときは、授権枠を10倍にする決議を取締役会で決議できます。
(もっとも来年4月施行の商法改正で譲渡制限会社においては発行済み株式総数の4倍までという授権枠の制限がなくなるので、あらかじめ大きな授権枠にしておくことができる)
<以下次号以降>
▲ページTOPへ

Copyright(c) 2002 愛宕法務経営事務所