■ Back Number  ■ 2001年 11月 No.97
 
2003年
2002年
2001年
2000年
 
【商法改正(1)】
 政府は、今年10月5日の閣議で「商法等の一部を改正する法律案」を決定し、同日衆議院に提出しました。同法律案は、成立すると来年4月1日施行としています。また、登記法、税法ほはじめ合わせて119本の関係法律の改正案も提出されました。従って、今回は税法関係の都合で施行が遅れることはないものと判断されます。
 商法、特に会社法については、今年の6月にも大きな改正があり、この10月1日から施行されています。今年と来年にかけて会社法の内容が大きく変わることになり、実務にも大きな影響ができす。あたごレポートでは数回に分けて商法改正について解説します。
【今回は改正は、株式に関する事項や取締役会、株主総会の運営に関する事項など多数含まれるため、実際の運営にも大きな影響があり、また、目まぐるしく変わる改正で実務的な運営方法についていけない方も多数おられると聞いています。そこで当事務所では実務運営に焦点をあててのセミナーを計画しています。開催時期は来年の1月を目論んでいますが、詳細が決まれましたら別途ご案内いたします。】

平成13年改正の概要
 10月1日から施行になった今年の改正内容の概要を見てみましょう。  大きく分けて、金庫株の解禁、株式の大きさの規制の廃止、単元株制度の創設、額面株式の廃止、端株制度の整備の6項目です。

1 自己株式取得、保有規制の改訂
(1)自己株式の取得
「定時」株主総会の決議をもって配当可能利益および同総会決議により減少した資本金・資本準備金の範囲内で、次回定時株主総会までに取得できる自己株式の内容を定め、これに基づき自己株式を取得することができる(これまでき一定の事由がないと取得できなかったが、これから原則自由化)
(2)自己株式の保有
これまでは一定期間のうちに取得した自己株式を処分しなければならなかったが、制限泣く保有できるようになった。
(3)自己株式の処分および消却
保有する自己株式は、取締役会の決議により処分できることとし、その場合には新株発行の規定を準用する。

2 株式の大きさに関する見直し
(1)会社設立時の発行価額に関する規制の廃止
会社の設立に際して株式の発行価額が5万円を下ることができないとした制限を撤廃した。
(2)株式分割時の純資産額等に関する制限の廃止
株式の分割に際して、額面総額が資本の額を越えることができないという制限、及び分割後の1株あたりの純資産が5万円を下ることができないという制限を廃止した。
(3)単位株制度の廃止
単位株制度を廃止した。

4 単元株制度の創設
会社は、定款で一定の数の株式をもって1単元の株式とする旨を定めることができ、その場合には株主は1単元につき一個の議決権を有するものとした。

5 額面株式の制度の廃止
額面株式の制度を廃止し、額面・無額面の別による規制の区別や額面未満発行の禁止等額面株式固有の規制を廃止した。

6 端株制度の整備
端株券の廃止等、端株制度を整備した。

細かい論点や運用面については、次号以降で検討します。

閣議決定改正案の概要
紙面の関係でエッセンスのみ記載します(詳細は次号)。

1 新株発行規制等の見直し
譲渡制限のある会社では、授権枠の制限を廃止する。
新株の有利発行の株主総会決議は1年間その効力を有する。
譲渡制限会社の第三者割当につき、株主総会の決議は、決議の日から1年以内に払込される新株発行に効力を有する(決議後最初の発行に限られない)。譲渡制限会社で第三者割当を行うときは、取締役会において割り当てる株式の種類、数、割当を受ける者の氏名を決議しなければならない。

2 種類株式
従来の配当の異なる種類株に加えて、議決権を行使することができる事項につき内容の異なる数種の株式を発行することができる。この種類株式は発行済み株式総数の半分まで発行することができる。定款をもって種類株主総会の普通決議を要する決議を定めることができる。

3 転換予約権付株式
転換株式を転換予約権付株式という語に改める。定款をもってある事由が発生したときに種類株を別の種類に強制的に転換できる条項を定めることができる。

4 新株予約権
分離型の新株引受権付社債、ストックオプション等の規定は撤廃し、新株予約権の条項を設ける。転換社債は新株予約権付社債とし、非分離型新株引受権付社債も新株予約権付社債と位置づける。「新株予約権」とは、これを有する者が会社に対してこれを行使したときに、この者に新株を発行し、または自己株式はを移転する権利。会社は新株予約権を発行することができる。譲渡制限会社では、新株予約権を譲渡するには会社の承認を要する。 これにより社債を発行することなしにワラントを発行できる。また、従業員や協力者にも発行できる。有利発行(無償も含む)もできる。ストックオプションの数量や受益範囲の規制もなくなったので、制限に関係なく付与ができる。

5 会社関係書類の電子化
 定款、株主総会・取締役会の議事録、計算書類、株式引受を証する書面、弁護士等の現物出資における証明書などの書類を電磁的記録(ファイル)の作成をもって代えることができる。
 株主総会の招集通知は株主の承諾により政令に定めた方法でメールにより発信できる。株主総会の議決権の行使について、書面やメールにより行使することができると会社は定めることができる。
 会社の計算書類は、政令の定める方法により公告に代えてウェブ等で公開できる。

6 その他
有限会社法、商法特例法等も所要の整備を行う。

7 施行日
この法律は平成14年4月1日から施行される。
解説は次号以降にしますが、総じて譲渡制限のあるベンチャー企業の資本政策の利便性、効率性に主眼を置き、アメリカ会社法を意識した改正が目立ちます。(以下次号)

▲ページTOPへ

Copyright(c) 2002 愛宕法務経営事務所