■ Back Number  ■ 2001年 5月 No.83
 
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【会社分割の利用】
 以前のあたごレポートで「4月からこうなる」の中で、昨年の商法改正による会社分割制度が4月から施行になるとの話を記載したところ、行く先々の取引先から詳しく教えてほしいとの問い合わせをうけました。
 皆さん、このテーマに関心が深いことを痛感しています。問い合わせを受けた方々の共通したお考えは、現在の事業が早晩拡大することは必至でそうすうるとどうしても関連事業を検討せざるをえなくなる。その場合、どのような会社組織にすれば効率的な運営ができるのか、その場合に会社分割は有用なのかとうものでした。

企業戦略としての会社再編
 ベンチャーであっても、事業が軌道に乗りますと、当然人も増えます。関連する業務、例えばクリエイティブな事業ならば企画部門と構成部門、作品の企画に重点を置くところと実際にそれを現実化する部門、商品を作る部門ならば、企画、開発だけでなく物流や販売の部門が、それぞれ大きく成ってくる、あるいは構築しなければならなくなってくるとうことになります。ある取引先は飲食店の経営をしていますが、その取扱メニューを商品化して冷凍食品として販売するということになると、生産部門や販売部門、物流部門や場合によっては広告部門も必要になってきます。 ここまでいくとひとつの会社の中で部門として動かすのか、別組織として運用するのかが迷うところです。
 以前はなんでもかんでもひとつの会社で揃えてみせるというパターンでした。しかし、それでは不採算部門が採算部門の足を引っ張りますと、どこが不採算の原因か不透明となります。また、会社の業績が必ずしも好調な業務と連動されずに収益が赤字の費目に流れてしまいます。すると資金調達にも齟齬をきたすようになり、会社のボリュームも重たくなり機動的な資金投下と回収ができなくなります。
 ゆえに近年は、機動的でスピーディな企業戦略を行えるよう資産内容のスリム化がさけばれ、分社による事業経営が叫ばれています。いわば小口化するわけで、刻々と変わる経済情勢に併せて容易に事業の再編を可能とします。
 小規模多種生産主義の時代に突入してからは、太った企業ではニーズに応えた事業転換が難しく、常に再編を念頭においた企業戦略が微妙な消費者のニーズに応える対応を可能にすると言えます。

持株会社を司令塔に
 そこで持株会社を作って、そこを作戦本部として各事業部門を子会社として臨機応変に動かそうという発想が出てきました。 再編のひとつの方法として株式交換・株式移動というのがあります。ふたつの会社の株式を交換して一つの企業グループにしようという制度です。具体的にはA会社とB会社がある場合に、A会社が新株発行してB会社の株主にすべて割当、その代わりにB会社の株主が所有する株式を払い込ませることにより(つまりA会社の株式とB会社の株式を交換する)、B会社はA会社の100%子会社になります。
 なんだ、B会社の株式を現物出資しただけではないかと言われればそれまでですが、実際に現物出資の手続でやると商法の規定により検査役の選任をおこなわなければならず、手続には実際は数ヶ月かかることから迅速な手続を行うことができません。また、検査役選任には100万円から数百万円の予納金を裁判所に納めなければなりませんし、検査に必要な書類もたくさんいります。ですから手間もコストも相当にかかります。株式交換制度は企業再編にとってはこれまでと格段にコストがかからず迅速な手続と言えます。

会社分割制度
 株式交換制度は、実質的には会社を統合する手段の一つで合併よりも手っ取り早い方法と言えます。
 会社分割制度は、いわばその逆で会社の部門を分離する仕組みと言えます。これも従来の方法ですと、新会社を設立して営業譲渡したり、営業部門を現物出資したりするしか方法がありませんでした。すると先ほどの現物出資の検査役の問題が生じる他に資産の移動が生じますから税金の発生という問題が起こり、それゆえに分社化はしたいのだがコストを考えると躊躇するというケースが多かったのです。
 今度の商法改正は、いわばその部分を制度化したといえます。
 詳しい仕組みや手続は、それだけで解説書が一冊作れるくらいですから、ここでは割愛して概要だけを説明しましょう。
 会社分割には二つのタイプがあります。ひとつは、事業部門を一つスピンアウトさせて、それを会社にさせる新設分割。それに対して別会社の部門としてくっつけてしまう吸収分割です。
 ここからが話がややこしくなりますが、物的分割と人的分割というタイプもあります。全部事例を書くとややこしてので新設分割で説明しましょう。例えばその会社の物流部門だけを分社化するとします。この場合に、物流新会社を設立し、その新会社の株式を元の会社で引き受ける(つまり物流部門を現物出資して新会社を設立するようなもの)場合は、元の会社の貸借対照表では、物流部門関係の資産がなくなる代わりに新会社の株式が計上されることになります。ですから新会社は元の会社の子会社となり、元の会社は勘定科目の一部が差し替わるだけで資本金や株式構成は何も代わりません。これを物的分割と言います。これに対して、株主の持っている株式から割ってしまう。元の会社から分離するので総資産も変化し、元の会社の株主は元の会社と新会社の双方の株式保有するいわゆる竹割り型の分割を人的分割といいます。この場合、元の会社と新会社は資本関係のない別会社ということになります。

会社再編の考案
 以上のようなしくみを理解しながら会社再編を検討していく必要があります。会社分割の場合は、実際分割をすると取引先の契約関係やはては事務所の契約者、公共料金の引き落とし先までどちらの会社に帰属させるのかという法理関係の再編も伴います。ですから、分割を検討するときは会社そのものを再点検してどのような分割プランにするかを検討するところから入ります。当然、資産や資本の変化もありますから試算表の作成も必要となります。
 なお、会社分割の税制では、新設分割などで、株主構成や資産構成を変化させずに分割する場合は実質的に株主間などでの資産の移動がないので譲渡税の対象にしない等の運用が決められました。
 会社再編は、事業の方向性、時間、コストなどの多面的な検討を元に戦略的に活用を期待します。
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