■ Back Number  ■ 2001年 4月 No.80
 
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【改正民事再生法】
 昨年のそごうの破綻の際に民事再生法の開始の申立が行われ、国民的レベルでもいきなり民事再生法の名前が有名になりました。
 民事再生法は、もともと中小企業には経営が破綻に近い状態になったとき和議か破産しか法的手続きの手段がなく、いずれも倒産の手続きとなるためアメリカなどのようにもっと流動的で復活のチャンスも与えられるようにすべきだとの認識から制定されたものです。いわば中小企業版の会社更生法であり、実際会社更生法のしくみや条文ともかなり似通った規定が随所にあります。
 特にそれまでは、中小企業が倒産をしてしまうと営業集団という意味合いがたちどころにに消滅して単なる人と物の集まりでしかなくなり、どんなにすばらしい営業力があり営業権として認められていたものも、二束三文の建物とか動産でしか価値を認められなくなるという現状でした。他方、会社更生法の適用される大企業の場合、すばらしい営業部門や営業資産はすくにM&Aされて、高い価値のあるものとして整理されていきます。中小企業と大企業は規模の違いことそあれ、実態も法的にも何ら変わりがないわけで、事実上の倒産直前に円滑な営業権移動が行われれば、その業務も従業員も生かされるわけです。民事再生法は、それを実現できるように規定されており、だからこそ創業の奨励を再び活発化した平成12年に制定されたのです。

個人版「民事再生法」
 民事再生法は、会社だけでなく医者などの個人事業者の再生も想定していました。ただ、大半が企業を想定しているため手続きにかかる費用が高かったり、手続きが(会社更生法並みですから)煩雑であったりで個人には使いにくい内容でした。また、サラリーマンの再生も対象にすべきではないかとの考えもあり、民事再生法を改正して「小規模個人の再生に関する特則」と「給与所得者等再生に関する特則」が制定された。
 サラリーマン向けの同様な法律に特定調停法があるが、これは調停制度の特則という位置づけのため、必ずしも相手方を強制的にテーブルにつかすことができず多重債務などの場合には難渋するケースもあった。今回は民事再生手続きとして行われるので、裁判所に足を運ばない債権者も法的な拘束を受ける。
 この制度が制定されたことにより、例えばベンチャーとして創業したものの資金調達がうまくいかず親類や友人からの借入がかさんでいて整理する必要がある場合とか、平成の初め頃にマンションを購入して住宅ローンが月に70万円近くあるのだが、リストラ等の関係で会社をやめざるを得なかったり、給与が著しく下げられて、いわゆる住宅ローン破産寸前までいっている場合などでは、従来は破産や住んでいるマンションを諦めなければならなかったのが、今回の制度では、社会的な信用の道は残されていたり、住まいまで取り上げられることなく再生できるチャンスが与えられることになります。

個人版民事再生のしくみ
 では具体的にどのうよな要件としくみであるか見てみましょう。

「小規模個人」
1. 自然人であること(法人は対象外)
2. 将来において継続的または反復して収入が見込めること
3. 再生債権の総額が3000万円を超えないこと(別徐権により弁済される債権を除く) これらは給与所得者のみならず理髪店などの個人事業者も対象となります。また、継続的・反復的であれば収入に変動があってもよいとされます。
 申立は債務者がします。小規模個人再生の手続き開始が認められると債権届や調査が始まります。債務者は債権者一覧表を提出し、これに基づき事務を進め債権者が債権がこの一覧表といっちすれば債権届がされたものとみなします。この手続き開始後は、再生債務者自身が財産管理機関となります。
 こうして再生債務者は再生計画を策定して提出しますが、その条件として弁済期は3ヶ月に1回以上とし、再生計画認可決定確定の日から3年以上3年1ヶ月未満を弁済期間とすることにされています。つまり3年で返せということです。再生計画は債権者の過半数が同意すれば裁判所が認可の決定に入ります。最低条件として、次の弁済条件を満たさなければなりません。
 債権額が100万円未満のときは最低弁済額はその全部、100万円以上500万円未満の場合は100万円以上、500万円以上1500万円未満の場合は、その債権の5分の1以上、1500万円以上の場合は300万円以上。
 再生計画認可決定後、やむを得ない自由で計画遂行が困難となったときは2年を超えない範囲で期限の延長ができるとされています。さらに病気や天災などにより収入がまったく途絶えた場合は免責の道も用意されています。

「給与所得者等再生」
1. 前記小規模個人と同じ3つの要件
2. 給与またはこれに類する定期的な収入を得る見込みがある者
3. その収入の額の変動が小さいと見込まれること
サラリーマンを想定していますが、再生計画による最低弁済額は可処分所得の2年分以上とされます。給与所得者の場合、費用が安く債権者の決議も不要で、弁済額も生活維持費をプールしたうえで計算してよいことになっています。

「住宅資金貸付に関する特則」
 住宅ローンをかかえた人に住宅ローンのリスケジュールを認めて住宅を確保させることを目的としている。この手続きはいずれの再生手続きにおいても再生計画の中で特別の条項として定めることにより利用できる。
 ここでいう住宅は自己の居宅に利用していることで投資目的は対象外だが、親子ローンのような共有はOK、店舗兼住宅の場合は2分の1以上が居宅として利用していればよい。対象は普通の住宅ローンである。
 リスケジュールは次のように行われる。過去に延滞した部分は5年以内に弁済し、これから支払う通常の支払い部分は約定どおり支払う。これではきつい場合があるので、その場合は、最終の弁済期を10年以内かつ年齢70歳まで遅らせることができる。70歳を超えなければ35年ローンを45年ローン延長することができ毎回の弁済額を減らすことができる。
 それでもきつい場合は元本の猶予期間中に一部を支払えばよいという計画を認める場合もある。さらに債権者の同意がある場合は、上記の条件に係わらずさらに期間延長等の緩和した条件を加えてもよい。
 また、保証会社が代位弁済した場合でもそれから半年以内に再生手続き申立がされた場合は、はじめから履行されていなかったものとみなされる。
 以上のとおり柔軟な規定もかなりあるので、万一のときは一人で勝手に判断せず専門家に相談するのが好ましいだろう。

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