■ Back Number  ■ 2001年 4月 No.78
 
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【消費者契約法の概要】
 今年4月1日より「消費者契約法」が施行されました。一般消費者を取引の相手とする企業にとっては重要な法律ですし、我々が消費者として利用する場合によっても重要な知識と認識しておく必要があります。

消費者契約法が規定された意義
 もともと消費者を対象とする契約については、昔からいろいろとトラブルがありました。町の中で突然勧誘されて、いきなり化粧品を買わされて、知らない間にサラ金を借りさせられいたとか、英会話教材を売りつけられて解約に応じてくれないとか枚挙がありません。特に町での勧誘や訪問販売など接客型の場合にその傾向が強いのですが、対顧客に対する交渉ノウハウというものが業者側に確立されていて、消費者の方はよく訳がわからず契約書(申込書)にサインさせられているというケースが多いのです。このように交渉の入口からして、業者側と消費者は実力の差がありすぎますので、相対的に弱者となる消費者を保護しようというのがこの法律の目的です。

まず摘要の範囲に誤解のないように
 まず当事者は誰かというのが大事です。この法律では「消費者」とは事業をしたり、事業のために契約の当事者となる場合を除く個人とされています。つまり、事業として商取引の関係で結ぶ契約は対象外です。例えば、会社同士の契約は最初から対象外ですし、個人事業主が取引先や提携先と結ぶ契約(売買契約だけでなく業務提携契約、委託契約、代理店契約、ソフト利用契約など)や業務として消費する契約も対象外です。この定義からすると当事務所がアスクルから不定期に事務用品を購入する契約などは本法の適用除外ということになります。もちろん、個人事業主でも、業務と関係なく個人的な利用とか家庭での利用などの場合は当然対象になります。 「事業者」はすべての法人、団体、個人事業者です。従ってNPO法人、民法組合、学校法人、労働組合、生協なども対象になります。社団や財団も対象です。弁護士、行政書士、司法書士など反復継続して行われる専門的職業も対象となります。
 対象となる契約は、労働契約を除く、この両者の間で結ばれるあらゆる契約が対象です。

保護の方法
 問題のある勧誘方法などにより締結した契約については消費者の取消権が認められています。また、契約書の中に巧みに事業者の損害賠償責任の免除や軽減が盛り込まれていても、そのような規定は無効とされています。 問題のある契約であっても消費者が取消権を行使しないと当然には無効となりません。訪問販売法ではクーリング・オフ制度により契約書面の交付を受けてから8日以内であればクーリング・オフができますが、本法ではそいう期限はありません。民法同様に取消権の行使ができます。取消権を行使されますと代金の返還や商品の返還の問題が生じます。

問題のある勧誘とは?
 問題のある勧誘とは次のような内容です。「不実告知」事実と異なることを告げること、「断定的判断の提供」将来の不確実なことを確定的に告げること、例えばこの商品は必ず値上がりするとか、先物商品や為替に関する商品で相場によるのに「アメリカでこういう状況になってるので、まちがいなく今度はこうなりますよ」と断定的に判断を与えるようなことを言うなどがあたります。「不利益事実の不告知」消費者の利益になることを告げ、不利益になることを故意に告げない行為、リスク情報を言わないとか、クレームがついた商品なのに情報を言わないなど。
 また、消費者の迷惑となるような勧誘方法をして契約させる行為も取消の対象となります。「不退去」消費者のいる住居や勤め先に押し掛けて、退去しない、例えば帰りますよといいながらダラダラと居続けるとか、勤め先にずっと居続けて、本人に肩身の狭い思いをさせて勧誘に結びつけるなど、場合によってはかって粘りの交渉と言われたものもこれに該当します。「監禁」消費者が退去の意思表示を示しているのに、退去させない、例えば業者の事務所や店舗から帰させない、外部の一定の場所に拘束させる、遠隔地に連れていって帰りの交通手段を封じ込めさせる(帰り道を教えないとか、切符を取り上げるとか)。

問題のある契約条項とは
 本法において消費者の不利益となり無効とされる条項とは次のとおりです。
「事業者の債務不履行や不法行為による損害賠償責任を全部免除や一部免除する条項」例えば運送契約で当社は運送中に生じた損害についてはいかなる理由があっても一切責任は負いませんというような規定があたります。一部免除の場合は、いわゆる損害賠償の予定がそうですが、これはこの条項自体が無効というのではなく業者が故意または重過失により一部しか賠償しないと行っている場合に適用されます。「瑕疵による損害賠償責任を全部免除する条項」隠れた瑕疵があって、それが現れたときに何も責任をとらないという規定は無効です。瑕疵補修や代物提供責任またはそれらと同様な責任を業者が負う場合は除きます。「契約解除による損害賠償額の予定のうち当該事業者に生ずる平均的な損害の額を越えるもの」例えば商品購入費が20万円で、これを契約解除したときに違約金として20万円を支払うという条項があった場合などです。また、駐車場の賃料1ヶ月1万円の契約で、滞納した場合、1日千円支払うと約定して6ヶ月滞納してまったケースでは183日分18万3千円となりますが、これを請求された場合は本法に触れます。正常な場合、6ヶ月で6万円に対してあまりにも過大な損害金であるからです。「損害金の割合につき14.6%を越えるもの」条文通り遅延損害金で14.6%を越えるものは無効です。「民法の任意規定よりも消費者の権利を制限したり義務を重くする条項で信義則に反して消費者を一方的に害する規定」も無効です。

以上のように契約書のあり方やセールストークにも注意が必要です。また本法が施行されたばかりですから、事業者・消費者双方がよく理解しないままに過度な対応してしまう可能性もあります(中身を勉強していないのに過敏反応してすぐに文句を言うケースなど)。一度勉強会などを開いてケーススタディをしてみるとよいでしょう。
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