■ Back Number  ■ 2000年 5月 No.61
 
2003年
2002年
2001年
2000年
 
【IT革命とリスク管理】
〜ビジネスモデル特許・特許リスク・ネット詐欺・ネットバブル〜

 情報技術革命=IT革命という言葉が言われ初めて久しくなりました。まさしく産業革命と同じ位置づけであり、いままさに怒濤のごとく席巻しています。アメリカの株式市場がやや弱含みにはなってきましたが、しかし経済の根幹はIT革命が進んでいることに違いはなく、力強い成長が進むことは中長期的にはゆるがない状況です。
 ところでIT化が進むにつれてまたさまざまな局面が現れてきました。ネット経済とも言われる現状ではさまざまな知恵の集約により新たな産業を起こす知恵の時代です。それだけに知的財産権に対する考え方を徹底しないと思わぬリスクにさらされることになります。

ビジネスモデル特許
 このごろビジネスモデル特許という言葉がよく目に留まります。皆さんも新聞、雑誌、ニュース等で毎日どこかしらでこの言葉を認識されているはずです。
 ビジネスモデルというとビジネスのやり方、スタイルということになりますが、これまでそういう手法、アイデアは特許の対象にはなりませんでした(営業秘密という方法はありましたが)。ところがインターネットの世界的な普及により、ある手法で成功をしている場合、同じ様な手法で誰でも同じような商売をすることができる現象がおきてしましいます。場合によれば弱小のところよりもあとから真似をした資本力のある企業がシェアをのっとってしまうこともあります。そこでビジネスモデル特許を認めようという傾向が出てきました。
 元はアメリカの判例からスタートしましたが今では日米でも多数の特許申請が上げられています。トヨタのカンバン方式や住友銀行の入金照会サービスなどでビジネスモデル特許を取得したニュースは記憶に新しいところです。
 ではどのようなものがビジネスモデル特許として認められるのでしょうか。実際はまだ定義付けがしっかりしていません。単なるビジネスプランでは特許の対象にはならないようです。これまで特許庁で認めているのはあくまでIT技術を組み入れたビジネスアイデアとして構成されていると言えます。日米でビジネスモデル特許として認められている例からみるとIT技術を使ったビジネスであり、処理の迅速さなどユーザーにとっての利便性があり、真似をされる可能性が高いものが対象になっていると推察される。いずれにせよ、ビジネスモデル特許にと思ったら積極的に弁理士等に相談することである。

IT特許リスク
 アメリカでは従来型の特許、知的財産権も含めて特許防衛が徹底されている。一番有用な手段は、権利侵害と思われる相手を絶対に見逃さず徹底的に法的に追求する。マイクロソフトがその発展期に自社製品の模倣を行う企業を徹底的に法的追求して他者の侵害を排除した例がある。
 最近は、日本のホームページに突然アメリカから名前の使用や手法について権利侵害を訴えられるケースが多く報告されている。本人は日本の中の一部のことくらいにしか考えていなくてもアメリカで訴訟されるケースもあるのだ。これによって予期せぬリーガルリスクにさらされる危険があるとうことがよくわかる。
 インターネットは、国境超えて自由に検索を行い事由に情報を交換できるようになった。ということは逆に言うと国境を超えて権利侵害をしている可能性もあり、また海外から権利侵害をしていないかチェックを受けている可能性も十分にあるということになる。知的財産権は何も特許だけでなく名前といった商標権やデザインといった意匠権などもある。日本の場合、今まで日本の国内でしか物事を考えてこなかったし、それでよかったのだが、今や国際的事情を検討しないと予防ができない。例えば株式相場にしても経済予測にしても日本固有の要因だけでなくアメリカ、欧州、はては中国や北朝鮮、アジア諸国の国情が反映してしまう。しかし、そういう視点で毎日の世情を予測している人は何人いるのでしょうか。

知的財産権リスク回避
 一発でこれはという対処方法はありません。他者から侵害を告発される前に日頃から知的財産権として登録したり権利を保全できるかチェックして実行することです。また、権利侵害をしていないかもいろいろな角度からチェックが必要です。弁理士に登録の相談をしたり行政書士にリーガルリスク予防のため契約事項のチェックや情報管理規定などの検討を相談しましょう。ライセンス契約等の検討も行政書士としてみるのもよいでしょう。

ネットには誘惑が多い
 これはイギリスからの報告ですがあちらでもネットフィバーという言葉があるそうで一種の集団ヒステリーだと分析する専門家もいます。大衆は物まね的集団心理となって誰かが儲かれば自分も儲かると資金を投入しもはや投資家とはいえないと言っています。ここにネット株詐欺が横行しているといいます。専用のサイトである株の情報を流します。これは偽の情報なのですが個人投資家は群がって投資を行い株価は上昇します。詐欺師は高値で株を売却してサイトこど消え失せるという手口です。また。中にはロンドンで有名なタブロイド新聞の株式欄の担当者が詐欺師だったケースもあります。ネット株の記事を毎日連載しているのですが、そこで推奨していた株が実は担当していた記者の取得していた株でした。記事に情報が書かれると翌日個人投資家がその株に飛びつき記者はその時株価上昇にあわせて売り抜く、それが1年半以上も行われたといいます。
 IT革命によって誰もが情報を共有できるようになりましたが、一方でこれは諸刃の剣であることを物語っています。情報そのものが操作されている可能性があること、逆に自分の発する情報が権利侵害として攻撃される可能性のあること、いままで毎日何のも問題なく利用していた情報がある日突然権利侵害だと訴えられる可能性があること。ITの利用は自己責任が大前提として要求されていることを認識し、常にリーガルリスクを負っていることを認識しなければなりません。これは到底現場だけでは対応しきれず、専門家と常に交えた検証が必要です。
 予防法務という言葉をご存じでしょうか。行政書士は予防法務の専門家でもあります。リスクヘッジはリーガルリスクにも必要だということをご認識ください。
▲ページTOPへ

Copyright(c) 2002 愛宕法務経営事務所