■ Back Number  ■ 2000年 2月 No.53
 
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【事業計画案の作り方】
〜資金面から見た計画の立案〜

 最近、起業のご相談や融資借入の相談で感じられるのは、事業計画かしっかりしていない例が多いという点です。一口に事業計画といっても、その利用目的によって組立方も分析の方法も量も違います。ここでは、特に事業の立ち上げであるスタートアップ時の事業計画であり経営計画、つまりは収支計画に焦点を絞ってお話します。この計画書は、融資借入申込の資料としてそのまま使用するタイプのものです。

計画書作成の目的
 事業計画書はどういう形で示すべきでしょう。それは目的によって違います。まず自分自身の計画のためならば、メモ書きの羅列でもいいでしょうし、ユニークな視点からの切り込みを無造作に連ねてもいいでしょう。しかし、人には見せられません。次に研究開発費などの助成金を得る、プレゼンをして研究開発のための出資を募るという場合は、研究の対象そのものを技術的にどのくらいすぐれているかを中心に要領よく展開する内容でなければなりません。この場合、その京急開発するものがどのような形で事業化され、あるいはどのような事業展開につながる可能性があるものなのかも併せて議論されなければなりません。3番目のケースは、出資者を募るとかベンチャーキャピタルに支援を願う、あるいは直接金融市場へディスクロージャーするという場合です。この場合は研究の中身だけ、あるいは技術やサービスのアイデアだけを単に力説しても意味はありません。むしろ、成長性・収益性・組織として保全面、利益計画など多岐にわたる分析と可能性を検証して投資家に成長性と期待可能性を認識させられるような計画書になっていなければなりません。4番目のケースは、創業時の借入申込やスポンサーへのプレゼン、支援金融機関への説明などに利用する事業計画書です。この場合、初年度から3年目にかけた収支計画、利益計画が中心になります。それは貸付金や支援したお金が十分回収可能なのかを分析するために要求される計画書だからです。
 それぞれによって目的が違います。要求される目的と計画書で説明されている内容がちぐはぐですと、相手にされないという結果に終わってしまいます。「技術が非常にすぐれているのはわかるのだが、あの計画書ではねぇ。もっとしっかり書いてくれれば」というセリフをよく助成金の担当者から聞くことがあります。どうしても、自分の製品や技術、アイデアの説明だけに興奮してしまって肝心の事業としての展開や可能性についてとんちんかんな答えしかしていないケースがあるのです。きちんとした事業計画を作るというのは、経営者がきちんと経営について整理でき、どこがあまいのか弱いのかを分析できるところにあります。

資金計画・収支計画

 さて、紙面の都合もありますから中身の話にしましょう。実際、本を書くくらいの内容ですから今回はポイント中のポイントです。創業支援資金を借りたいという人に「いくら必要ですか」と聞くといとも簡単に1000万円くらい必要ですと答える方が多いです。しかし、「それは今必要なのか」と聞くと大抵は「今年1年中には」とか「それくらいあれば安心できるから」とか曖昧な答えしかかえってきません。つまり借りたい人自身がどの時期にいくら最低限必要なのかわかっていない方がほとんどです。これではまず貸してもらえません。なぜなら、本当に必要な金はいくらか、いつお金がいくら出ていっていつ入金があるのかまったく不透明でからです。あるプロジェクトに本当に1000万円必要だとします。この場合、審査で500万円しか無理だと判断して500万円だけ貸しても意味がありません。1000万円ないとできない事業だからです。従ってこの案件は謝絶になります。事業が動かないから焦げ付く可能性が大きく、他の利用目的に流用されてします恐れがあり回収に極めて不安が予想されるからです。
 と言うことは、これを裏返した計画書がきちんとできていればよいということになりますね。ある製品を作って販売する、ある技術で仕事をする、あるサービスで仕事をするという案がまず最初にあります。それでは、どういうユーザーがあるのか、取引先はつくのかという検証をしなければなりません。これがあって初めて売り上げ見込みが建てられます。いわばマーケットリサーチです。販売先の見通しがつくかという判断がしっかりできているかがポイントです。ここでは次の点をチェックしなければなりません。まず販売量の見込み、いつから売れるのか、最悪の場合はどのような販売量になるかという観点を希望的観測をはずして客観的に検証します。次に仕入れ資金または外注費はいつ発生し、支払条件はどうなるのか、売上はすぐ現金で回収できるのか、掛け売りか、利益率はどうなるのかを押さえましょう。
 これを月別に立ち上げから12ヶ月程度までに落としこみます。すると入金の条件と支払の条件が違うのならば月々で資金が不足したりあまったりするのがわかります。不足する分が本当に必要な運転資金です。不足運転資金は業種によって違います。立ち上げ時に不足するケース、季節要因で不足するケース、営業拡大のため仕入れが先行して運転資金が不足するケースなどさまざまです。ここでのポイントは、つまり商売の見通しの条件、売上見込みと支払見込みがきちんと固まっているのかが重要です。ここが押さえてあれば稼働するための運転資金はいついくら必要で、開業時の設備資金はいくら必要かなどがきれいに説明できます。また、こうすることで経営者である自分自身も資金繰りに不安を覚えずに済みます。経験からいって1000万円必要と大ざっぱに言うひとは、よく詰めると500万円からせいぜい700万円の資金需要で足りるはずです。しかも開業時に必要な資金というともっとしぼれます。また、設備の方もリース、不動産リース(設備リース、店舗リース)などを利用すれば必要資金はぐっと押さえられます。
 往々にしてこの資金面からの分析がおざなりになっている人をよく見ます。今回は紙面の都合で断片的にしか紹介しませんでしだが、エクセルやロータスなどの表計算ソフトで簡単に収支計画・資金計画を作れますから資金面のやりくりについて大いに研究をしてください。
 なお、当事務所では収支計画を含めた事業計画の立案、経営アドバイスを行っていますからぜひご相談ください。
 また近い機会に融資審査担当から見た事業計画書作成のポイントを議論します。

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