■ Back Number  ■ 2000年 1月 No.52
 
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【当世在留事情】
帰国希望者、入管ラッシュ
 昨年出入国管理法が改正されて今年2月18日から改正法が施行される。大きなポイントは「不法入国者」を取り締まるため刑罰規定を新設強化した。不法入国者とは、密入国やパスポート偽造など不正な方法で入国をした者を対象とする。いわゆるオーバースティは対象ではない。ところが情報不足からオーバースティヤーの中で「法改正で不法滞在者の一斉摘発があり全員30万円の罰金をとられ刑務所に3年入れられる」といううわさが広まり、そうなる前に手続をして出国しようと入国管理局に殺到している。普通、入国管理局という大手町にある合同庁舎内の東京に入国管理局を思い浮かべる人も多いと思うが、不法滞在者の場合はここへはいかない。板橋にある東京入国管理局第二庁舎へ行く。ここは不法滞在等問題がある在留者の手続を行う場所なのである。彼等が行なおうとしているのは、自費出国による許可。あらかじめ出国用の予約済み航空券などを持参し自費で出国をすると申し出れば、逃亡の恐れがない限り出国予定までの日にちまでの特別許可をもらい出国できる。入管にとっては、いちいち収監して国費で国外退去する必要がなく、本人も収監のおそれがなく、かつ出国までは合法的にいられるので空港まで行くのに逮捕される心配もなく出国手続きも行えるメリットがある。このような状況で1月5日には早朝から500人が並んだ。帰国するための行列は延々と続く。関東一円から車でやってくる者も多く道路に車があふれでていたという。

入管の一斉摘発
 入管は99年11月に首都圏において入管法違反の一斉摘発を行い、期間中に不法入国者265人を含む1324人を摘発した。摘発者の特徴としては、韓国・中国・フィリピン、タイ、バングラデッシュの順でこの5カ国で全体の8割を占めた。事案としては不法滞在がもっとも多く、不法入国は20%だった。摘発された地域としては東京がもっとも多く953人、ついで埼玉県243人、茨城県240人、千葉県216人でこの4都県で全体の75.4%を占める。大規模摘発を受けた例では、それぞれ正規の在留資格の活動をせずホステスなどをしていた例が多い。

不法在留者の実態
 ややふるいが法務省が昨年7月1日現在の不法在留者数について発表している。併せていろいろ多角的に分析がされていて意外な傾向が現れた入りしていて興味深い。
 オーバースティの数は26万8421人で1年半前に比べ2627人(1%)減少している。過去最多は平成5年5月で、そのころより10%程度減少している。
 男女別では男53.1%、女46.9%であった。
 出身地別で見ると韓国23.8%、フィリピン14.6%、中国13.5%、タイ9.9%、ペルー3.8%、マレイシア3.6%、台湾3.5%、イラン2.4%、ミャンマー2.0%、インドネシア1.8%、バングラデッシュ1.7%、パキスタン1.5%となっている。何となく西アジアが上位になりそうな気がする人も多いだろうが、韓国が一番多いというのが意外です。中国の場合も要注意の国とされていますが、おそらく不法滞在よりも不法入国の方が多いのだと思われます(不法に入国していますからカウントできない)。また、欧米がまったく入っていないことなどから見ても教育状況や経済事情も反映されていることがわかります。
 在留者は、日本に入国するときどういう目的で長期に在留するのかという在留資格を得て日本に入国します。オーバースティの在留資格の構成比として短期滞在74.7%、興行4.9%、就学4.6%、留学2.2% と続き、圧倒的に短期滞在者が多いです。これは観光ビザで入国して、そのまま日本に潜伏してしまうことを意味します。事実、そういう状況で、そのためにアジアを中心に査証免除停止にしている国が増えています。興行というのも、よく地方の観光地で曲技団とかショーをみせる外国の興行者がいますが、あれで入国して実態はバーなどのホステスとして円を稼いでそのままオーバースティとなるケースです。興行の実態がありませんから期間の更新ができないのです。
 ところで韓国のオーバースティーが多いというのが意外です。東洋人は日本人とほとんど変わらない容姿ですから普通に生活していると気が付かないのかもしれません。オーバースティーの大半は日本で仕事をしたいからで、稼いだ賃金は母国へ仕送りするか貯金するかのいずれかのようです。在留資格の構成を見てもいずれも日本で就業することのできない資格であり、就業できる資格に変更できないことからオーバースティーとして潜伏してしまうことになるようです。
 今後、日本のあり方を議論するなかで外国人労働者の採用をもっと認めようという議論がでています。長期的には労働力不足が懸念され、その対策として議論されていますが、またまだ抵抗も大きいようです。大半の方は在留事情の実態をご存じない方も多いとおもいますが、どんな風に映りましたか。

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